まだ私が独身のころの話です。当時はお金を貯めるべくトラックドライバーとして運送屋に務めていました。より賃金のいい長距離の運送を希望し兵庫県の西宮の洋菓子工場から神奈川県の新横浜の倉庫までの配送を月に数回やっていました。
西宮の工場を出るのが夜10時頃。
新横浜の工場に朝4時までに届けなければいけなくねむい眼をこすりながら、ほとんど休憩もせずぶっ続けで高速道路を走っていました。
みんながぐっすり寝ている時間に、ひたすら働き、深夜の配送ですから高速道路も空いています。
少々きつかったのですが、賃金がいいので良しとしていました。
いつものように、早く西宮の工場に着き荷物ができるのを、トラックの運転席で待っていました。もう冬が終わり季節も春となり暖かい季節だったと思います。その日も天気が良く、夜になっても暖かい快適な日でした。まわりは酒メーカーの工場などがあり
その辺一体は工業地帯です。たくさんの運送トラックが行き来しミキサーや重機などの特殊車両もたくさん止まっています。けっして人が少ない場所ではなくむしろたくさんの人が働いているような場所です。
私のトラックを止めている前は別の会社の倉庫です。もう業務が終わったのか、人の気配がしません。広い駐車場にはもう車は止まっていませんでした。運転席の窓をあけてペットボトルの飲料を飲んで前を見ていると不自然にコンビニの袋が横にゆっくり動いていました。
「なんだ?」風でなびいているなら、ふわふわと舞うはずの袋。あきらかに小動物に袋をかぶせているような動きです。
「なんか変だな?」
不自然な動きにじっと目をこらして凝視します。のそのそ動いていた袋はピタっと止まりました。
なんかこちらの気配を察知して静かに止まった感じです。
「ん?」
少し怖くなりましたが、この袋の正体を知りたくて眼をそらさずにじっと見ます。すると袋にまるで目がついているかのようにピカピカと光ました。
「うわ!」
驚きで背筋がこおりました。
きっと猫が袋をかぶされているだに違いない。真相をつきとめるべく、トラックから降りその袋まで走って追いかけました。走り寄る間に、その袋はまたゆっくりと横に動き塀の裏に消えました。私は駆け寄り塀の裏を見ました。
「ない?」
その袋はありませんでした。
しかしたしかにさっきまで目の前で動いていたのです。猫かと思いましたが、動きが不自然です。むしろラジコンカーのような動きでした。
もしかして「宇宙人?」
まさか・・・。
まわりを見回してもいつもの工場地帯。特に何もありません。私は首をかしげ、いつものようにトラックで新横浜を目指しました。
その出来事を最後にこの長距離配送の仕事がなくなりました。別の運送会社に変わったのです。
はて、いったい何だったのだろうか?今だよくわからない袋なのでした。怖いような怖くないような微妙な話。でも実話です。