私は20代の頃、飲食業界で働いていました。バイト時代からよく耳にしていた噂がありました。飲食店には必ず霊がいる!という噂。食い物、飲み物、人が集まる場所には必ず霊が集まる、と言うのです。
バイト時代は霊を見ることはありませんでしたので、さほど気にしてはいませんでしたが、社員になってから、不思議な霊体験をよくするようになりました。
まず、終電に間に合わず帰れなくなることが多かった店の社員になった時。
よく、上司と朝まで店内で残業をしたり、仮眠を取ったりしていましたが、その時はラップ音の様なパチパチと言うような音や、ガンガンと言う音を聞く程度でしたが、初めて店内に一人で仮眠を、とっていた時のこと、人の気配を感じて、なんとなく目を覚ますとおじさんが席に座って新聞を読んでいました。
しまった!開店時間だ!お客さんがいるのに寝たままだった!と、慌てて飛び起きました。
目を擦って良く見ると、誰もいませんでした。
夢かな?と思いましたが、その後も店内で仮眠を取ると必ずその席にはそのおじさんが座っている気配があるので、最初は怖かったけど、悪さをされるわけでもないので、気にしないことにしました。
また別の日には店内の階段をキャーキャー言いながら子供が二人乗り降りりしていて、うるさい!
と思って飛び起きると、子供はいませんでした。またか!そう思い、なんだか怖くなってその日はタクシーで帰りました。
別の日に、他の社員に相談すると、この店には子供の霊が昔から出ること、おじさんの霊もよく出る、とうことがわかりました。その後も私はチェーン店を数店舗転勤したのですが、霊が出る店は共通して、アーケード下か、半地下にある店だとわかりました。ジメジメしやすい店舗に霊は集まりやすく、新築のビルやテナントには霊はいなかったのです。
霊感の無い人にいくら話しても信じて貰えませんが、同じような体験をした社員は共通して同じ霊を目撃していました。みんなに共通していた考えとして、飲食店にいる霊は悪さをする訳でも人間に危害を加える訳でもなく、ただ寂しくて集まっているだけ。だから、気にせず好きにさせておこう、ということでした。
面白いのは、日中に霊に遭遇した社員の話で、小さな子供が、スプーンを貸してください、と店員に言いに来て、スプーンを受けとるとトイレに向かいました。
しばらくトイレを見ていたが、なかなか子供が出てこないので、店員がトイレのドアをノックするが返事はなく個室の鍵はかかったまま。仕方なく上から安否を確認すると、無数のスプーンがトイレの個室に散らばっていたらしいです。ちなみに、そのスプーンはよそのチェーン店の物でした。