昔、氾濫して川に流され亡くなった「あやこ」。
大分県在住。Eさんの体験談。
困った人や困ってる人を放っておけない性格の女の子が十数年の時を超えて成長し田舎へ戻る事になった僕を見つけて助けてくれる。亡くなっても変わらない性格の女の子への感謝の話。
僕の田舎はのどかな所で周りには田んぼと山ばかりの小さな町でした
ご近所さんは皆、親戚みたいな付き合いをするほど仲が良く農家がほとんどでした。
小さい頃の遊びは近くの神社で鬼ごっこや缶蹴りなどで遊んでました。
ある日、いつもの様に遊んでたら急に豪雨になり帰れず神社で雨宿りをしてたら友達の1人が変な音に気付き神社の中の小窓から外を見たら大きい熊が居て神社の周りをグルグル回っている所を発見しました。
小学生の考えは時に恐ろしく、走って逃げたら大丈夫と言う答えになり神社の後ろに熊が行ったのを見て全員で、一斉に走って逃げました。
神社から民家まで約10分。
途中に小さな橋があり、そこを通って行くのですが豪雨で川の水位が高くなり最後に走って来た女の子が流れてきた大きな流木にぶつかり川へ落ちて流されてしまい帰らぬ人となりました。
その女の子の名前は「あやこ」と言う名前の子
責任感が強く曲がった事が嫌いで困ってる人を放っておけない女の子でした。
その事件があってから神社へ子供だけで行ってはダメと規制がかかりました。
それから中学生になり村から通うには遠いと言う理由で町へ引っ越し高校と大学は都会へ進学したので田舎には7年ほど帰ってませんでした。
やがて社会人となり数年たったある日、祖父か亡くなったとの連絡が入り田舎へ行く事になりました。
田舎へ戻るのは15年振りくらいで道路など整備されてたり、昔あった道路が無くなってたりと変わってましたが懐かしさを感じながら歩いてました。
実家へ帰り、祖父の顔を見て葬儀まで時間があったので昔を思い出しながら歩いてたら道に迷い気付いたら昔、遊んでた神社に着きました。
手入れがされてなかったのかボロボロで屋根も無くなってたりしてました。
戻ろうとしたら昔の道はあの事故以来封鎖
草が生えて無くなっており完全に迷ってしまって、どこを歩いてるか分からない場所まで来てしまいました。辺りは暗くなり持ってた携帯の光を照らしながら雨風をしのげる場所を見つけそこで寝る事にしました。
朝になり目が覚め、実家へ戻ろうとして歩きだしたが何処に居るのかも分からず困ってたら川の音が、かすかに聞こえたので向かいました。
歩く事10分ほどで川を発見し上流の方へ歩いてたら同じ歳くらいの女性に出会いました。
「どうかされましたか?」
この一言に何故か懐かしさを感じたが事情を説明し何とかして葬儀に間に合わせたいと行ったら、そこなら分かるから連れて良かったら案内しますよ?と言うので甘えました。
何故か懐かしさを感じながらも、昔の話をしながら村まで案内してもらいお礼がしたいから名前を教えて欲しいと言うと、その女性が「あやこです。」と伝え間に合わなくなるから早く戻って下さいと言って来た道を戻って行きました。
後日あやこって同じ歳くらいの女性が居ないか祖母に聞きました。
この村は皆、親戚みたいな付き合いをしてるから名前を言えば何処の誰とすぐ分かるのですが祖母は言葉を詰まらせてました。
聞くと、あやこって名前は昔の事件のあった友達だった子以外は居ないって言われ、何処で会ったのか聞かれました。
下流のダムの近くで迷ってたら会ったと伝えたら祖母が重い口を開き「昔、流れて亡くなったあやこは下流のダムの近くで発見されたんだ。それ以来、下流でお前と同じくらいのあやこって名乗る女性が迷った人とかを連れて来てくれる。」と言いました。
あやこはあの事故以来、迷った人や困った人を助けてるんだなと思い、あやこの実家へ行き線香をあげお礼をして来ました。
あやこの実家を出て車で街まで送ってもらう時にダムの近くを通るんですが、ダムの近くを車で走ってる時に川の向こうで手を振ってる女性が居ました。
何故か涙が止まらなかったんですが不思議と怖いって感情は無く、また線香をあげに来るからと心の中で誓って帰って来ました。
あれ以来、毎年の命日には今でも線香をあげに行ってます。