私の実家に飾られた日本人形の顔の表情が喜怒哀楽変化すると、ある日母が言い出しました。私の誕生祝でもある人形が、母親一人に見せる喜怒哀楽の表情が、離れた娘の様子を知らせるサインのような役割をしたという話です。
実家の日本人形のお話です
男の子に兜や鯉のぼりを用意する様に、家に女の子が誕生するとお祝いとして人形を用意する家庭も多いと思うんですが、私の実家でも用意されていたんです。
私の姉が誕生したお祝いには洋式の人形でしたが、私の誕生を祝う際に用意された人形は、日本人形でした。
洋式の人形はブラウンの髪にカールを巻き、ピンク色のドレスを身に纏ったものなんです。
顔も可愛くガラスのケースに収められているんです。
数十年経過しても変わらぬ美しさを保っています。
ところが、奇妙なのは私が頂いた日本人形の話なんです。
その人形は、祖母が私の実家に嫁いでくる時に、嫁入り道具の一部として実家から運んできた物であると聞いているんですが、ガラスケースに収められているために、人形そのものは大変美しく時代が変化しても劣化は見られない程の見栄えだったんです。
しかし、何時もは座敷に飾って置いた人形を毎日見ていた私の実母が、ある時変な事を言うようになったんです。
母は「時々人形の顔が変わる。」と言うんです。
私の母は、60代の高齢に差し掛かったこともあり、痴呆症が発症したのではないかと疑ってみたのですが、
病院の検査では、痴呆症ではないという診断結果でした。
私は、母の言う事を信ることにしました
そこで、日本人形の顔を写真に撮って見比べてみることにしたんです。
でも、この実験を行っている間に変化見つけることもできずに、母と二人の間でも話はなかった事になっていってしまったんです。
ところが、私が実家を離れて暮らしだしてから、母がまた「人形が悲しい顔をするのよ。」と言い出したんです。
そこでまたもや、私は母に、「何時そんな時に人形の表情が変化するのか教えて」とお願いをしておいたんです。
そんなある日のこと、夜間に実家の母親から電話がありました。
電話口から母は、「何時もは口角を上げた微笑みの表情の人形が、いま、悲しい顔している」と伝えてくるんです。
母親によると人形の表情は、悲しい顔と普段の微笑みの顔と怒り顔の三パターンを繰り返しているそうです。
そうして、ある日に母親から連絡を受けた時、私は丁度腹を立てている最中でした。
この時にもしかして、私の感情とリンクしているのかもしれないことに気づいたんです。
その後も日本人形を私の住まいに運びだして、様子見ていたんですが一向に表情が変化しないんです。
もしかすると、子を思う母の念が人形に移って、子供の喜怒哀楽を教えてあげていたのかもしれません。
あれから、まだ実家に飾られている人形ですが、髪が伸びてきたそうです。