日本怖話

恐怖の心霊現象から感動して笑える心霊体験など今まで見たこともない不思議な怖い実話エピソードが満載

洒落にならない怖い話

洒落怖の名作「地下の井戸」「両手で顔を覆う人々」「洗髪」

洒落怖で短編の怖い話といえば今回紹介する「地下の井戸」「両手で顔を覆う人々」「洗髪」で、本格的な怖い話を読みたい方におすすめの作品です。少しでも怖さが和らぐように恐怖の洒落怖体験談を猫と犬で語ります。

洒落怖の名作「地下の井戸」

怖い話をする猫
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これを書いたら、昔の仲間なら俺が誰だか分かると思う。
ばれたら相当やばい。まだ生きてるって知られたら、また探しにかかるだろう。
でも俺が書かなきゃ、あの井戸の存在は闇に葬られたままだ。だから書こうと思う。
文章作るの下手だし、かなり長くなった。
しかも怪談じゃないから、興味の湧いた人だけ読んで欲しい。
怖い話をする猫
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今から数年前の話。俺は東京にある、某組織の若手幹部に使われてた。Nさんって人。
今やそういう組織も、日々の微妙にヤバい仕事はアウトソーシングですよ。
それも組織じゃなく、個人が雇うの。警察が介入してきたら、トカゲの尻尾切りってやつね。
その代わり金まわりは、かなり良かったよ。
怖い話をする猫
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俺は都内の、比較的金持ちの日本人や外国人が遊ぶ街で働いてた。
日々のヤバい仕事っていうとすごそうだけど、実際に俺がやってたのは、
ワンボックスで花屋に花取りに行って、代金を払う。
その花を俺がキャバクラから、高級クラブまで配達する。
キャバクラ行くと、必ず花置いてあんだろ?あれだよ。
で、花配りながら集金して回る。
もちろん、花屋に渡した代金の、3~5倍はもらうんだけどね。
3万が10万、5万が25万になったりするわけよ。月に3千万くらいにはなったね。
怖い話をする猫
怖い話をする猫
俺がやるヤバい仕事ってのは、最初はその程度だった。
それでも結構真面目にやってた。
相手も海千山千のが多いからさ。相手が若僧だと思うと、なめてかかって、値切ろうとするバカもいるんだよね。
その度に暴力沙汰起こしてたんじゃ、仕事になんないわけだ。起こす奴もいるけど。
でも警察呼ばれたら負けだからね。次から金取れなくなるから、組から睨まれる。タダじゃすまんよ。
そういう時、俺は粘り強く話す。話すけど、肝心なトコは絶対譲らない。
一円も値切らせないし、ひとつの条件もつけさせない。
怖い話をする猫
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前置き長くなったけど、まあうまくやってるってんで、
Nさんの舎弟のSさん、Kさんなんかに、結構信頼されるようになった。
それで、時々花の配達に使ってるワンボックスで、夜中に呼び出されるようになった。
積んでるのは、多分ドラム缶とか段ボール。
荷物積む時は、俺は運転席から出ない事になってたし、後ろは目張りされてて見えないから。
それで、ベンツの後ろついてくだけ。
荷物を下ろしたら、少し離れたところで待たされて、またベンツについて帰って、金もらって終了。
何を運んでたなんて知らない。
その代わり、1回の仕事で、花の配達の1ヶ月分のバイト代をもらえた。
怖い話をする猫
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ある夜、また呼び出された。
行ってみると、いつもとメンツが違う。いつもはSさんかKさんと、部下の若い人だった。
ところがその日は、幹部のNさんがいて、他にはSさん、Kさんの3人だけ。
3人とも異様に緊張してイラついてて、明らかに普通じゃない雰囲気。
俺が着いても、「エンジン切って待ってろ」って言ったまま、ボソボソ何か話してた。
「・・・はこのまま帰せ」
「あいつは大丈夫ですよ。それより・・・」
途切れ途切れに会話が聞こえてたけど、結局俺は運転していく事になった。何だか嫌な予感がしたけどね。
怖い話をする猫
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後ろのハッチが開いて、何か積んでるのが分かった。
でも今回は、ドラム缶とか段ボールじゃなかった。
置いた時の音がね、いつもと違ってた。重そうなもんではあったけど。
更に変だったのが、SさんとKさんが同乗した事。いつもは俺一人でベンツについてくだけなのに。
しかも、いきなり首都高に入った。
あそこはカメラもあるし、出入口にはNシステムもあるから、
こういう仕事の時は、一般道でもNシステムは回避して走るのに。
怖い話をする猫
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首都高の環状線はさ、皇居を見下ろしちゃいけないとかでさ、何ヵ所か地下に入るよね。
恥ずかしながら、俺は運転には自信あるけど、道覚えるのは苦手なんだよね。方向音痴だし。
怖い話をする猫
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多分環状線を、2周くらいしたと思う。
車が途切れたところで、突然Nさんが乗るベンツが、トンネルの中で、ハザード出した。
それまでSさんもKさんも、ひと言もしゃべらなかったけど、
Sさんが「右の車線に入って止めろ」って。言われるままに止めたよ。そこって合流地点だった。
で、「中洲みたいになってるとこに、バックで車入れろ」って言うから、その通りにしてライト消した。

両側柱になってて、普通に走ってる車からは、振り返って見たとしても、なかなか見つけられないと思う。
まあ見つけたとしても、かかわり合いにならない方が良いけどね。
Nさんが乗ったベンツは、そのまま走り去った。

SさんとKさんは、二人で荷物を下ろしてたけど、俺にも下りて来いって。
俺はこの時も嫌な予感がした。今まで呼ばれた事なんて無かったし。
SさんとKさんが、二人で担ぎ上げてるビニールの袋。
映画とかでよく見る、死体袋とかいう黒いやつ。もう中身は、絶対に人間としか思えない。

怖い話をする猫
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とんでもない事に巻き込まれたって思って、腰が痛くなった。多分腰抜ける寸前だったんだろう。
何で組の人じゃなくて俺なの?ってその時は思ったけど、その理由も後になれば分かったんだけど。

で、Sさんが「ポケットに鍵があるから、それ使って、金網の扉の鍵開けろ」って言うから、言う通りにした。
金網開けて5~6メートルで、また扉にぶつかる。
扉というより、鉄柵って感じかな。だって開ける為の把手とか無いし、第一鍵穴すら見当たらない。
どうすんだろうな~と思ったら、またSさんが別のポケットを指定。
今度は大小ひとつずつの鍵。コンクリの壁にステンレスの小さい蓋が付いてて、それを小さい方の鍵で開ける。
中に円筒形の鍵穴があって、それは大きい方の鍵。
それを回すと、ガチャって音がして、柵が少し動いた。
右から左に柵が開いた。壁の中まで柵が食い込んでて、その中でロックされてる。
鍵を壊して侵入は、出来ない構造らしい。

怖い話をする猫
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更に先はもう真っ暗。マグライトをつけて先に進んだけど、すぐに鉄扉に当たった。
『無断立入厳禁防衛施設庁』って書いてあった。
これは不思議だった。だってここ、道路公団の施設だよね?
ていうか、こんなとこ入って平気なのかな、って思った。
まあこの人たちのやる事だから、抜かりは無いとは思うんだけど、
監視カメラとかあるんじゃないのって、不安になった。
まあ中に進んだら、もっと不思議なもんが、待ってたんだけどね。
鉄の扉も、さっきの鉄柵と同じ要領で開いて、俺たちは中に入った。
怖い話をする猫
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SさんもKさんもうっすら汗かき始めてて、随分重そうだったけど、運ぶの手伝えとは言わなかった。
中に入るとすぐ階段で、ひたすら下に下りて行った。結構下りた。
時々二人が止まって、肩に担ぎ上げた『荷物』を担ぎ直してた。

階段を下りると、ものすごく広い通路が左右に伸びてた。多分幅10mくらいあったと思う。
下りたところで、ひと休みした。
通路はところどころ電灯がついてて、すごく薄暗いけど、一応ライトは無しで歩けた。
俺たちは反対側に渡って(って言いたくなるくらい広い)、左手に向かって進んだ。

時々休みながら、どれくらい進んだかな。
通路自体は分岐はしてない。ひたすら真っ直ぐで、左右の壁に時々鉄の扉がついてる。
ある扉の前でSさんが止まって言った。
「これじゃねえか。これだろ」
そこには『帝国陸軍第十三号坑道』って書いてあった。字体は古かったけど。
信じられる?今の日本にあるのは陸上自衛隊でしょ。何十年も前のトンネルなのか、これは?

SさんもKさんも、汗だくで息も荒くなってたから、
扉を入ったところで、また『荷物』を下ろして休憩する事にした。
二人とも無言だったから、俺も黙ってた。
しばらくして、Sさんが「そろそろ行こう」って言って、袋の片側、多分『足』がある側を持った。そ
したら・・・
『袋』が突然暴れた。
Sさんは不意を突かれて手を放してしまい、弾みで反対側の袋の口から、顔が出てきた。
猿ぐつわを噛まされた、ちょっと小太りの男。

怖い話をする猫
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どっかで見たことある・・・それもあるけど、
分かっていながらも、袋からリアルに人が、しかも生きた人が出てきた事にビビッて、俺は固まってた。
SさんがKさんに、
「おい何で目を覚ました!」「クスリ打てクスリ!」「袋に戻せ!」
とか言ってるのが聞こえた。
Kさんは「クスリは持って無い」とか、何とか答えてた。
その間も『袋』は暴れてた。
暴れてたというか、体を縛られてるらしく、激しく身をよじって、袋から出ようとしていた。

するとSさんが、袋の上から腹のあたりを、踏んづけるように蹴った。
一瞬『袋』の動きが止まったけど、「ウ~!」とすごい唸り声を上げながら、また暴れ出した。
Sさんは腹のあたりを、構わず蹴り続けた。それでも『袋』は、暴れ続けた。
やがてKさんも加わって、二人で滅茶苦茶に蹴り始めた。
パキって音が、2、3回立て続けにした。多分肋骨が折れたんだと思う。

『袋』の動きが止まった。その時なぜか男は頭を振って、俺に気が付いた。
それまですごい形相で、暴れていた男が、急に泣きそうな顔で俺を見つめた。
Sさんが「袋に戻せ」と言うと、Kさんが男の肩のあたりを足で抑えながら袋を引っ張って、男を中に戻した。
今でもその光景は、スローモーションの映像のまま、俺の記憶に残ってる。
男は袋に戻されるまで、ずっと俺を見てた。一生忘れられない。

怖い話をする猫
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Kさんが、袋の口をきつく縛るのを確認すると、Sさんは更に数回、袋を蹴った。
「これくらいかな。殺しちゃまずいからな」
Sさんはそう言って、俺を見た。
「お前、こいつの顔を見たか」
「いえ・・・突然だったんで、何が何だか」
そう答えるのが精一杯だった。
その時に、本当はどこかで見たような気がしたけど、思い出せなかった。

SさんとKさんは、再び動かなくなった『袋』を担ぎ上げた。
それまでと違うのは、真ん中に俺が入ったこと。
もう中身を知ってしまったので、一連托生だ。

それから、その13号坑道ってやつを延々歩いた。
今までの広い通路とはうって変わって、幅が3mも無いくらいの、狭い通路だった。
右手は常に壁なんだけど、左手は時々、下に下りる階段があった。
幅1mちょいくらいの階段で、ほんの数段下りたところに、扉がついてた。

何個目か分かんないけど、Sさんがある扉の前で「止まれ」って言った。
そこもまた『帝国陸軍』『帝国陸軍第126号井戸』って書いてあった。
(128だったかも。偶数だった記憶があるけど忘れた)
それで、Sさんに言われるまま中に入った。
中は結構広い部屋だった。小中学校の教室くらいはあったかな。
その真ん中に、確かに井戸があった。でも蓋が閉まってるの。重そうな鉄の蓋。
端っこに鎖がついてて、それが天井の滑車につながってた。
滑車からぶら下がっている、もうひとつの鎖を引いて回すと、
蓋についた鎖が徐々に巻き取られて、蓋が開いてく仕掛けになってた。

怖い話をする猫
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オレは言われるままに、どんどん鎖を引っ張って蓋を開けていった。
完全に蓋が開いたとこで、二人が『袋』を抱え上げた。
もう分かったよ。この地底深く、誰も来ない井戸に投げ込んでしまえば、二度と出てこないもんね。
でもひとつだけ分からない事があった。なんで『生きたまま』投げ込む必要があるの?

二人は袋を井戸に落とした。ドボーン!水の中に落ちる音がするはずだった。
でも聞こえてきたのは、バシャッて音。この井戸、水が枯れてるんじゃないの?って音。
SさんとKさんも顔を見合わせてた。
Sさんが俺の持っているマグライトを見て、
顎をしゃくってみせ首を傾げて、『井戸を覗け』ってジェスチャーをした。
マグライトで照らしてみたけど、最初はぼんやりとしか底まで光が届かなかった。
レンズを少し回して焦点を絞ると、小さいけど底まで光が届いた。
光の輪の中には、『袋』の一部が照らし出されてる。
やっぱり枯れてるみたいで、水はほとんど無い。
そこに手が現れた。真っ白い手。さらにつるっぱげで、真っ白な頭頂部。
あれ、さっきの『袋』の人、つるっぱげじゃ無かったよな。
ワケが分かんなくて呆然と考えていたら、また頭が現れた。
え?2人?ますます頭が混乱して、ただ眺めてたら、その頭がすっと上を向いた。目が無い。
空洞とかじゃなくて、鼻の穴みたいな小さい穴がついてるだけ。
理解不能な出来事に、俺たちは全員固まってた。
しかも2人だけじゃ無さそうだ。奴らの周囲でも、何かがうごめいている気配がする。
何だあれ?人間なのか?なぜ井戸の中にいる?何をしている?

怖い話をする猫
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その時、急に扉が開いて、人が入ってきた。
俺は驚いてライトを落として、立ち上がってた。SさんとKさんも。
入ってきたのはNさんだった。Nさんは俺たちを見て、怪訝そうな顔をした。
「S、もう済んだのか」
Sさんは少しの間呆然としていたけど、すぐに答えた。
「済みました」
Nさんは俺たちの様子を見て、俺たちが井戸の中身を見た事を悟ったみたいだった。
「見たのか、中を」
俺たちはうなずきもせず言葉も発しなかったが、否定しないことが肯定になった。
「さっさと蓋閉めろ」
言われて俺は、慌てて鎖のところに行って、さっきとは反対側の鎖を引いて回した。
少しずつ蓋が閉まっていく。
「余計な事を考えるんじゃねえ。忘れろ」
そう言われた。
確かにそうなんだけど、ぐるぐる考えた。
『殺しちゃまずい』って、Sさんは言ってた。
Sさん自身も、なぜ殺しちゃだめなのか知らなかったんだと思う。
生きたまま落とした理由は?生きたまま・・・あの化け物のような奴らがいるところへ。
考えたく無くなった。

俺たちは来た道を戻り、車で道に出た。
今度はSさんとKさんは、Nさんのベンツに乗っていった。
そしてそれが、3人を見た最後になった。

怖い話をする猫
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俺は思い出していた。あのとき『袋』に入っていた男の顔を。
最近出所してきた、会長の3男だった。
出来の悪い男というウワサだった。ケチな仕事で下手を踏み、服役していたらしい。
俺は2、3回しか顔を合わせた事が無かったが、
大した事無さそうなのに、威張り散らしてヤな感じだったのを覚えてる。
だからといって、会長の息子を殺すのはアウトだよ。死体を隠したっていずれバレる。
それでも出来るだけバレないように、俺を使って運んだんだろうけど。

あの出来事から2週間くらいして、Nさんが居なくなった。
『お前も姿をくらませ』って、Sさんから電話があった。
バレたんだ。会長の息子を殺ったのを。

組から距離をおいていたのが幸いして、俺は逃げ延びる事ができた。
SさんやKさんがどうなったのかは知らない。
あれから数年、俺は人の多い土地を転々としている。
これはあるネットカフェで書いた。
もうすぐネットカフェも、身分証を見せないと書き込めなくなるらしい。これが最後のチャンスだ。
組の人たちがこれを知れば、どこから書いたのか、すぐに突き止めると思う。
だから俺は、この街には二度と戻ってこない。

誰かあの井戸を突き止めて欲しい。なぜあの井戸に、暴力団なんかが鍵持って入れるのか。
そうしたら俺の追っ手は、皆捕まるかも知れない。
俺は逃げ延びたい。これからも逃げ続けるつもりだ。

洒落怖の名作「両手で顔を覆う人々」

怖い話をする猫
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去年の暮れから街には顔を両手で覆う人々を見かける様になった。
その人々は混雑する街の雑踏の中でも微動だにしないで立っていた。
そんな話を会社の同僚などにすると誰一人そんな人々は見たことが無いとの事だった。
顔を両手で覆っている人々に気付いたのは去年の暮れからだ
人ごみにまぎれて妙なものが見えることに気付いたのは去年の暮れからだ。
顔を両手で覆っている人間である。ちょうど赤ん坊をあやすときの格好だ。
駅の雑踏の様に絶えず人が動いている中で、立ち止まって顔を隠す彼らは妙に周りからういている。
人ごみの中でちらりと見かけるだけでそっちに顔を向けるといなくなる。
最初は何か宗教関連かと思って、同じ駅を利用する後輩に話を聞いてみたが
彼は一度もそんなものを見たことはないという。
その時はなんて観察眼のない奴だと内心軽蔑した。
しかし、電車の中や登下校する学生達、さらには会社の中にまで顔を覆った奴がまぎれているのを見かけてさすがに怖くなってきた。
後輩だけでなく何人かの知り合いにもそれとなく話を持ち出してみたが、誰もそんな奴を見たことがないという。
怖い話をする猫
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だんだん自分の見ていないところで皆が顔を覆っているような気がしだした。
外回りに出てまた彼らを見かけた時、見えないと言い張る後輩を思いっきり殴り飛ばした。
俺の起こした問題は内々で処分され、俺は会社を辞めて実家に帰ることにした。
俺の故郷は今にも山に飲まれそうな寒村である。
両親が死んでから面倒で手をつけていなかった生家に移り住み、しばらく休養することにした。
幸い独身で蓄えもそこそこある。
毎日本を読んだりネットを繋いだりと自堕落に過ごした。
手で顔を覆った奴らは一度も見なかった。
きっと自分でも知らないうちにずいぶんとストレスがたまっていたのだろう。
怖い話をする猫
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そう思うことにした。
ある日、何気なく押入れを探っていると懐かしい玩具が出てきた。
当時の俺をテレビに釘付けにしていたヒーローである。
今でも名前がすらすら出てくることに微笑しながらひっくり返すと俺のものではない名前が書いてあった。
誰だったか。
そうだ、確か俺と同じ学校に通っていた同級生だ。
同級生といっても机を並べたのはほんの半年ほど。
彼は夏休みに行方不明になった。
何人もの大人が山をさらったが彼は見つからず、仲のよかった俺がこの人形をもらったのだった。
ただの懐かしい人形。
だけど妙に気にかかる。気にかかるのは人形ではなく記憶だ。
のどに刺さった骨のように折に触れて何かが記憶を刺激する。
その何かが判ったのは生活用品を買いだしに行った帰りだった。
親友がいなくなったあの時、俺は何かを大人に隠していた。
親友がいなくなった悲しみではなく、山に対する恐怖でもなく、俺は大人たちに隠し事がばれないかと不安を感じていたのだ。
何を隠していたのか。
決まっている。
怖い話をする猫
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俺は親友がどこにいったか知っていたのだ。
夕食を済ませてからもぼんやりと記憶を探っていた。
確かあの日は彼と肝試しをするはずだった。
夜にこっそり家を抜け出て少し離れた神社前で落ち合う約束だった。
その神社はとうに人も神もいなくなった崩れかけの廃墟で、危ないから近寄るなと大人達に言われていた場所だ。
あの日、俺は夜に家を抜け出しはしたのだが、昼とまったく違う夜の町が怖くなって結局家に戻って寝てしまったのだ。
次の日、彼がいなくなったと大騒ぎになった時俺は大人に怒られるのがいやで黙っていた。
そして今まで忘れていた。
俺は神社に行くことにした。
親友を見つけるためではなく、たんに夕食後から寝るまでが退屈だったからだ。
怖い話をする猫
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神社は記憶よりも遠かった。
大人の足でもずいぶんかかる。
石段を登ってから神社がまだ原形をとどめていることに驚いた。
とうに取り壊されて更地になっていると思っていた。
ほんの少し期待していたのだが神社の周辺には子供が迷い込みそうな
井戸や穴などはないようだ。
神社の中もきっとあのときの大人たちが調べただろう。
家に帰ろうと歩き出してなんとなく後ろを振り返った。
境内の真ん中で顔を両手で覆った少女が立っていた。
瞬きした。少女の横に顔を覆った老人が立っていた。
瞬きした。少女と老人の前に顔を覆った女性が立っていた。
瞬きした。女性の横に古めかしい学生服を着込んだ少年が顔を覆って立っていた。
瞬きした。皆消えた。
前を向くと小学生ぐらいの子供が鳥居の下で顔を覆って立っていた。
俺をここから逃がすまいとするように。
あの夜の約束を果たそうとするように。

洒落怖の名作「洗髪」

怖い話をする猫
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数年前、私は妹と二人で東京で暮らしていました。

元々は二人別々に部屋を借りていたのですが、二人の家賃を合わせると一軒家が借りられるという事に気付き、
都心から多少離れてはいるものの、広くて綺麗な家を借りる事にしたのです。

ある日、妹がお風呂に入り私が二階でテレビを見ている時です。

風呂場から
「ギャアアアアア!」
という物凄い悲鳴が聞こえました。
ゴキブリでも出たのかと思って一階に下りると、妹は髪をぐっしょりと濡らしたまま裸で廊下に立っていました。
何があったか知らないが、いくらなんでもその格好はないだろうと呆れながらも
「どうした?変態が出たか!?」
と聞くと青ざめた顔で
「・・・とにかく見て来て、お願い」
と言います。
さっそく見てきますが、特に変わった様子はありませんでした。
脱衣所までびしょ濡れで、妹が湯船から慌てて飛び出した様子が伺えました。
取り敢えず一息付けて、妹は事情を話し始めました。

怖い話をする猫
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いつものようにお風呂に浸かっていると
「ヒュー・・ヒュー・・」
人間の呼吸のような音が聞こえたと言うのです。
周りを見渡したのですが誰もいません。
風の音だと解釈し、妹は深く気にせずに髪を洗い始めました。

湯船に浸かりながら上半身だけ外に身を乗り出し、前かがみになって髪を洗います。
手の平でシャンプーを泡立て、地肌に指を滑らせ髪を揉むようにして洗いました。
そのとき、ある事に気付いたのです。

・・・髪が・・・長い・・・?

怖い話をする猫
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妹が洗っている髪の毛は、彼女自身の髪よりも数十センチも長かったそうです。
そして、もう一つのある事実に気が付いた時、妹は思わず風呂場から飛び出してしまったそうです。
後頭部に何かが当たっている・・・
すぐに分かったそうです。

鼻・・・人間の・・

私は少し言葉に詰まりましたが、落ち着いて言いました。
「そんな訳ないだろー、勘違いだって」
ですが妹の怯えは尋常ではありません。

それ以降の妹は極度の怖がりになってしまい、お風呂に入る時は必ずドアの外で私が待機するようになりました。
私自身は今日に至るまで何ら不思議な体験をしてません。
しかし妹は確かにあの時、自分でない誰かの髪を洗ったと言います。

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