これは、私がまだ小学生の時の話。私は当時、夏休みの終わり頃で夕方仮眠をする習慣が出来ていた。宿題も大方終わり、暇を持て余していた私は、友人と朝は昆虫を取ったりして遊び、午後になるとプールに行ったり、サッカーをしたり、夕方仮眠を取り夜はまたコオロギなど夜に取りやすい虫を取ったりして遊んでいた。
お盆も迫り真夏のジワジワと照りつけるような日差しはややおとなしくなったものの、昼間は汗がじっとりと溢れるようなそんな季節だった。
この日も、友人とサッカーをして遊び、夜は近くの牧場に行きコオロギを取って遊ぼうと約束して別れた。そして自宅に戻り、仮眠を取るため自室で寝ようとしていた。時計を見ると16時45分だった。
あと一時間くらいで親が帰ってくる・・・そう思い目を閉じると4時だった。「あ!やっちまったか」そう思い勢いよく飛び起きる。
周りを見るとやけに暗い。確かにここは見慣れたはずだった自室なのだが、どこか作り物のような気がする違和感を感じた。そして時計は4時。夏の終わりで涼しくなってきたとはいえ、こんなに暗いはずがない。
部屋を出て母が寝ているはずの隣の寝室を覗き込む。「あれ、母ちゃんがいない。外かな」玄関を見ると靴が一足もなく、下駄箱を見ても空だった。母ちゃんは外にいるとして親父と俺の靴はどこだ。
そう思っていると隣の部屋からテレビの音が漏れてくる。背中がゾッとした。あまりに人の気配がないのにテレビがついた。怖くなり私は自室に走って戻り、ベッドで布団にくるまる。「これは夢だこれは夢だ・・・」そう心の中でつぶやくと、さっき自分が通って歩いていた廊下から誰かが走ってくる足音が聞こえた。ドタドタドタ。
自分よりも小さい子供が走っているような足音だ。
そうしているうちにぴたっと私の部屋の前で止まる。空気がシーンとして静寂で耳が痛いくらいだった。誰もいないはずの部屋の前、誰かがこっちを見ている気配を感じた。私はじっと目を閉じ気が付かないふりに努めた。
どれくらいの時間が経っただろう、汗がじんわりあふれ出てくる頃、気配は消え気が付くと遠くから目覚まし時計の音が聞こえた。え?私は目を開けるといつもの部屋だった。時計を見ると17時25分。よかった、あれは夢だったのか、そう思っていると廊下を誰かが走り去っていく足音が聞こえた。その瞬間、また背中から汗が噴き出すのを感じた。呆然としていると間もなく母ちゃんが帰ってくる。
「○○君風邪ひいちゃったんだって?今日はなにして遊んでいたの?」母ちゃんがそう私に尋ねた。
「え?○○とは昼までサッカーして遊んでいたよ?夜はこれから虫取に行くんだけど」
寝ぼけてないで早く、ご飯支度するからこっちきなさい・・・と母ちゃんは言ってキッチンの方へ向かう。
今でも私はあの日、昼間誰と遊んでいたのか思い出すことが出来ない。
そしてあの足音は誰の足音だったのか今でも不思議に思っています。