私が短大に通っていたある夏のことです。
長野県在住。Eさんの体験談。
高校の頃からお付き合いしている彼とその友人、私の高校時代の友人を引き合わせようということになり、夜のバーベキュー場で飲み会をしていた時のことです。
そこは昼間は散歩やジョギングを楽しむ人も多く、緑の多い憩いの場なのですが、時折自殺者が出るとウワサの森の中にある公園でした。
近くにキャンプ場もあり、高校時代にクラスの仲間でキャンプをしたりと楽しい思い出のあった場所なので怖いウワサはすっかり忘れて楽しんでいました。
その日は、キャンプ客もおらず、バーベキュー場を利用しているのも自分たちのグループだけでした。
お酒が進んで、すぐ近くのトイレに行こうとしました。
トイレはバーベキュー場から少し離れた場所にあり、バーベキュー場は照明がついて明るいのですが、そこからトイレまでは20メートルほどですが暗く、その横には斜面がありその斜面を登るとウワサの森があります。
歩いていると、森に登る斜面の方からガサガサと草をかき分けるような音がしました。
はじめはキツネか何か動物かな?と思い視線を向けると、そこには斜面を登る黒い人影がありました。
そこではじめてこの森では自殺者が多いことを思い出し、こんな時間に森に一人で入るなんて自殺しようとしている人ではないか?と思いました。
どうしよう、止めたいけれど、何て声を掛けたらいいんだろう・・・友人たちの場所まで戻って助けを呼ぼうか・・・など色々考えて立ち止まている内に、ふと黒い影の人物がこちらに気付いて動きを止めました。
私はその人物が黙ってこちらを見ていたので
私の存在に気付いて自殺は諦めるのではないかと思い、とりあえず声は掛けずにトイレに向かおうとしました。
すると、10数メートルは離れた森の斜面を登っていたはずの黒い影が一瞬で目の前に移動してきました。
しかし、目の前にいるのにも関わらず、人の顔はなく、人型の黒い影の中に小さい無数の虫が飛び回っているような、昔のテレビの砂嵐画面のようなそれが自分の目の前10センチほどに広がっていました。
私は驚いて叫ぶと友人たちの場所まで逃げ帰り、その後すぐにその場所を後にしました。
霊感があるという程ではないのですが、今までにも霊はたまに見たことがあったのですが、その霊はどれも普通の人の様に見えていました。
服装は古かったり、動きが少し違和感があったりすることもありますが、余りにも普通に見えるので、消えるまでそれが霊とは思わずあまり怖いと思ったこともなかったのですが、その時見たそれは全く異質なものでした。
この世に未練を残し漂っているだけの霊ではなく
何か強い思いや恨みを残してなくなると、あんな風になってしまうのかなと思いました。
今はあの森の近くに住んで、昼間は散歩や虫取りに行ったり、冬は歩くスキーを楽しみに行ったりしますが、今でも夜にあの場所に近づくのは怖いです。
知り合いのお子さんが、森をお散歩中に「ママ、あの人顔色悪いね」と言い、木の上を見上げていたそうです。