引っ越し先の新築アパートで聞こえた恐怖のうめき声体験談

恐怖の心霊体験談

これは私が二十歳で上京し、一人暮らしを始めた頃のお話です。
当時学生生活が忙しく、アルバイトをしてお金を貯める余裕もあまりなかったため、都内で安い物件を探していました。東京は地方に比べると家賃がとても高く、なかなか条件の良い物件を見つけるのが難しかったのですが、運良く安価で新築の女性専用アパートの一部屋を借りることができました。

その年のはじめに建てられたばかりだというアパートは、質素ながらもとても綺麗で私はとても満足していました。

引っ越し当日の夜、荷物の片付けや新生活のための手続きなどで疲れ切った私は、ベッドに倒れこむようにして眠りにつきました。数時間たった頃でしょうか。私はふと目を覚ましました。「今何時だろう?」と壁の時計を見ようと首を持ち上げようとした私。

が、全く身体が動かないのです。そこで初めて、自分が金縛りの状態にあることに気がつきました。目はパッチリと開いているのに、身体に力が入りません。そのまま天井を見つめていると、何やらうめき声のようなものが耳をかすめました。

「うぅ…うぅ…」初めは気のせいかと思ったその声は、次第にはっきりと聞こえるようになり、怖くなった私は全身に冷や汗をかいていました。今すぐ布団から起き上がりたいのに身体は動かないままです。「ううぅ…」男性とも女性ともいえないその声は何か苦しみを訴えているようにも聞こえました。

私はなすすべも無く、目を見開いたまま横になって朝を迎えてしまいました。ふと気づくとうめき声は聞こえません。もともと霊的なものをあまり信じていなかった私はきっと引っ越しで身体が疲れていたのだろうと、その夜のことはあまり気にしないことにしました。

しかし、その後も断続的に金縛りに合うようになりました。

毎日ではないものの、金縛りに合うときは決まってあの声が聞こえます。だんだん私は気味が悪くなり誰かに相談しようと考えました。地元で仲の良かった友人に電話で話をすると、友人はこんなことを言いました。

「でも新築のアパートでしょ?事故物件なんてこともありえないんだし…」私の中でこの言葉が何となく引っかかりました。たとえあの声や金縛りが霊的なものだとしても、この部屋を使っていた人がいないとすると一体誰の霊や私怨なんだろう?そう考えた私はそのアパートが建っていた場所について探ることにしました。

調べた結果こんなことがわかりました。

アパートが建つ前、その場所は数年ほど駐車場として利用されていたのですが、それ以前はホスピスがあったというのです。終末医療の患者たちが最後を迎える場でした。しかしそのホスピスは内部の不祥事から運営できなくなり突然取り壊されたというのです。

きっと取り壊しと同時に立ち退きを強いられた患者も多くいたのでしょう。この地で病に苦しみ最期を迎えた人たちの苦しみが、止むを得ず施設を取り壊されたことにより行き場がなくなってしまったのではないかと私は考えました。

その土地の歴史を知ってしばらくしてから、金縛りにはあまり合わなくなりました。そこにいた人たちの存在を知ったことだけでも何か効果があったのでしょうか?

でも未だにこの部屋でたまに聞こえるのです。あの「うぅ…」という声が。この声は何なのでしょう。私がまだ知りえないこの場所の事実があるのかもしれません。