僕がこの家に住み始めたのは、かれこれ5年も前の事。大手不動産サイトで見つけた地下室付きの建売戸建て住宅を購入し、家族で住み始めた。
夢のマイホームを手に入れ、引っ越しを今か今かと待ち遠しく待っていた。
引っ越し作業はスムーズに終え、家に合う素敵な家具も買い揃えいよいよ新生活がスタートした。
引っ越ししてしばらくは、絵に描いたような幸せな日々だった。
しかし、ある日を境に不気味な出来事が次々と起こるようになる…。
その日も何事もなく一日を終え、そろそろ2階の寝室へ上がろうと妻と話していた時のこと。
2階から「ドスン」と物音が聞こえた。
2階には当時1歳の娘が眠っている。壁に頭や足でもぶつけたのか?と思った。
また、2階から「ドスン」と物音が聞こえる。明らかに、娘が眠っている部屋とは違う位置で音がしたことに気づき、思わず妻と顔を見合わせた。音の正体を確かめるため、恐る恐る2階へ上がる僕と妻。
音がしたであろう部屋の扉を開けたが、変わった様子は何もなかった。もちろん幽霊の姿もなければ、物が落下した形跡もない。
その日は、不可解に思いながらもそのまま就寝した。
その出来事を境に、我が家では頻繁にラップ音が聞こえるようになった。
ラップ音だけでは済まないことも。
例えば、僕がシャワーを浴びているときのこと。その日は浴槽にお湯は溜めていなかった。
夏だったのでシャワーだけで済ませようとしていたところ、いきなり風呂の浴槽に湯が沸き始めた。
僕の家の風呂はキッチンにもコントロールパネルがあって、そこからも風呂を沸かす設定ができる。
きっと妻がボタンを押したのだろうと思い、
「風呂沸かすボタン押した?」と尋ねた。
答えはNOで、テレビを見ていてキッチンに近づいてもいなかった。僕はちょっぴりゾッとした。
しかし、機械なので誤作動でもしたのだろうと思うことにした。
風呂以外にも頻繁に起こるのは、テレビが勝手に着いたり消えたりすることや、
スマホのアプリが勝手に起動すること。特に嫌なのはiPadに娘の遊び道具としてピアノのアプリを入れているのだが、それが勝手に起動して意味不明な旋律を奏でること。
昼間であれば「またか…」と思う程度だが、深夜にそれが起こるとさすがにビビる。
そんな不可解な現象が1年以上続き、もう日常のこととなっていたある日のことだった。
就寝の支度を終え、妻が先に2階の布団に入るよう2歳になった娘に促した時のことだ。
いつもならば、走って階段を上がっていく娘が「一緒に階段のぼる」と言う。
階段の上り下りが一人でできるようになってからは、「自分でやりたい」と言って聞かない娘だったので、「どうしたの?」と妻が聞いた。
「階段のそこに女の子が座ってるから怖い」と言う。
思わずゾッとして、詳しく聞いた。
娘によると、リボンを頭に着けていて赤いスカートを履いているとのこと。
顔は少し微笑んでいるそう。
それを聞いて今までの不可解な出来事は、きっと女児の幽霊かなんかがイタズラしていたのかな?と妙に納得した。
それからしばらくラップ音や電子機器の誤作動は収まって、もう出て行ったのか?と思っていた矢先のこと。
4歳になった娘が地下室で遊んでいると、泣きながら1階に上がってきた。
酷い泣きようだったので理由を尋ねると、凄い勢いで女の子が近づいてきて怖かったと話す。
またあの子が出たのか…そう思い特徴を聞いた。
やはり、頭にリボンを着けて赤いスカートを履いているそうだ。
私はその格好や娘が「女の子」と呼ぶことから、すっかり女児だと思っていた。
念のため、「小さい女の子なんだよね?」と聞くと、「ううん、違うよ。ママと同じくらいの女の子だよ。」と。
背筋がゾッとした。