これは母が体験した私の幼い頃におきた話です。当時私はお墓が真横にある道を通らないと帰れない、市営住宅に住んでいました。日頃から心霊体験をしている父ですが、母にはそういった経験はひとつもなかったそうです。
ある日四人家族の私達は父の仕事終わりに皆でキャッキャ楽しそうに遊んでいました。
しかし、私の一言でその場の空気が変わったそうです。
『ねえ、ベランダにぶら下がってる血だらけの女の人あぶないねえ?』こう言ったそうです。
もちろん母には見えるわけもなく、父は見慣れているせいか『ほんとだね。危ないね。』と返したそうです。
そこから私の霊感が強くなり、小学生に上がる頃には毎日のようにベランダに人が訪れるようになったのです。
小さい子供が2人でベランダで遊んでいたり、男の人が怒鳴りつけたりなど、たくさんの心霊体験を経験してしまった私はどんどん慣れていってしまいました。
私の母は自営業で飲食店を営んでいましたが時々私も手伝いをするようになりました。しかし、どうしても個室の一部屋だけ空気が重苦しく足を踏み入ることができない部屋がありました。
ある日宴会の予約が入り全ての個室を繋げ一部屋にし、宴会準備を手伝っていたとき、ふと体が重くなったのです。
すると急に祖母がかけよってきて『今女の人が入り込んできたよ!!』というのです。
祖母は急いで私の背中を叩き女の人を自分の体に入れてくれました。その後祖母も自分で女の人に出てもらうよう説得したそうです。
その時ふと、あのベランダの女が私の脳内をよぎりました。私に憑依した霊がその女だとは見たわけではありませんが、そう感じました。
『あ、私あの霊についてこられているんだ。』そのときは何故か冷静にそう考えました。しかしその後は特に何も無く体も軽くなり有意義な毎日を過ごせていました。
そんな日々はそう長くは続きませんでした。
ベランダの横に私の部屋はあり、またベランダから色々な声が聞こえたのです。その時はもう既に金縛りで体は動きませんでした。男の人の声で『お前のせいだ!お前だ!うるせえんだよ!!』と聞こえた後に手を強く握られた感覚になり、とても痛かったのを覚えています。
その声が終わり、金縛りが解けてふと目を開けた時、私の顔の横には目を見開いた女の人がいたのです。そう、あの血だらけの女です。この人は男の人に虐待されベランダから飛び降りたのかな、と感じました。私の腕にはしっかりと握られた跡が残っていました。