とある有料老人ホームで一瞬の出来事だった霊体験談

不思議な体験談

離婚後、幼い子どもを連れて実家に帰ってきた私は、すぐにでも働ける場所を探さなくてはならない状況に陥り、子どもを預ける場所もなかったため、当時唯一企業内託児所の在った新規オープンしたての有料老人ホームに面接に行きました。

面接後すぐにでも来て欲しいと言われ、資格はあったものの経験もない私を雇ってくれたのは本当にありがたい出来事でした。

その時オープンから2,3か月たったころだったと思います。その2,3か月の間に入居して亡くなった方がいたということはオープニングスタッフであった数人のうわさでちらほらと聞こえてくる状態でした。でも、人が亡くなるということは非常に聞きにくいもので、また、誰も詳しく話してくれようともしなかったので聞く機会もありませんでした。

ただ、スタッフの間で在籍しているけれど来なくなった人がいるということの話の中から「あの時も・・・」・・・とその亡くなった方の名前がちらっと上がってくることがあったのです。ただ、やはり何があって亡くなったのか、その方のなくなり方が事故だったのか、歳のせいなのか、何も詳しく聞けることなく、4階の〇号室にいてたということぐらいしかわからないままでした。

気にはなるものの、そのことを気にする暇もないくらい時間に追われ、仕事に、家事に、育児に・・・と毎日がばたばた過ぎていく状態でした。
2階の入居者は比較的介助の必要な方が多く、その分スタッフも数人はいてる状態で、にぎやかで、騒がしくて・・・そこで先輩方についてもらい研修をしていくような職場でした。

4階はそこから仕事に行くくらいの方が入居していたり、ほぼ介助も必要なく、自宅にいて食事の用意するのは大変だからここで住んでいるというレベルの方がいました。そのため、日中も夜間もスタッフの人数は少なく、早出、日勤、遅出、夜勤が各1人ずつで1日に計4人しかスタッフはいませんでした。

早出は朝食の用意を一人で行い、外注スタッフが入っている厨房から上がってくる朝食を各自ように振り分けて、食べ終わった食事の片付けをして、日勤に引き継ぐ。
日勤、遅出で昼食の準備、片付けをして、遅出と夜勤スタッフで夕食の準備、片付けを行います。

私はその日遅出で4階のスタッフとしていました。遅出と夜勤の2人で行うとはいえ2階の状況が落ち着かないと夜勤スタッフが4階に上がってくることはなく、遅出の勤務内で終わらせておかなければ夜勤スタッフに迷惑がかかるギリギリの状態で回していました。

入居者も徐々に増えて、食事の用意も時間がかかるようになり、2階の入居率が上がると、介助の必要がない人ばかりであった4階にもある程度の介助が必要な方も入居するようになりました。「さすがに1人では時間が足りない。でも、その食事以外の時間にはそれほどスタッフが必要な場面もない。」ということで食事の時間だけ2階スタッフが手伝いに来るようになっていた頃でした。

いつも通りに食事の用意をしてそれぞれの居室に声をかけて食事室にきてもらい、食べ終えた食事を下げて、誰がどれくらい食べたか、水分は取れているかのチェックをしていると後ろを誰かが通った気配を感じたのです。

いつも食事室でゆっくりしていく方多かったので、「ん?誰が帰ったんだろう?」と顔をあげて食事室を見渡すけれど全員そろっていたのです。不思議に思ってカウンターから廊下を見ると車いすらしきものが一瞬見えた気がしたのです。

でも、入所者は全員食事室にいるのです。見間違えかとおもいつつ、2階のスタッフに声をかけて、「今、車いす通り過ぎたよね?」とたずねると、「うん、通ったね。でも多分もういないと思うよ」と普通に言われました。そのスタッフ普段からよく見えているらしくて、その見えているものが実在するものなのか違うものなのかはわかるそうなんです。私には非常にびっくりな体験で、夜勤スタッフが上がってきた時にそーっと聞いてみたのです。

彼女はオープニングスタッフで、当時のことを知っている一人だったので、「(オープン当時に亡くなった)○○さんって、車いすに乗っていましたか?」とたずねたところ、乗ってたよ~と即答。その日に見えた姿を伝えると「○○さんかな、よく似た感じだったよ」とさらっと言われて若かった私はゾクゾクしたのを覚えています。

というのも、車いすの向かった方向にはその方がかつて住んでいた部屋しかなかったのです。

今でもそこにいるのか、それともたまたま遊びに来ていたのかはわかりませんが、ほんとに不思議な体験でした。
今では老人ホームを退職したのでどうなっているかはわかりませんが、今でもその老人ホームは同じ場所にあります。