青春を謳歌していた姉と友人Aちゃんの突然の別れ

不思議な体験談

25年程前の夏。少し歳の離れた姉は、高校を中退し派手な格好をして毎晩遊び歩いているような、いわゆるヤンキーでした。そんな姉と仲が良く、いつも一緒に遊んでいた友人のAちゃん。当時、小学生だった私の印象は、背も高くスタイルも抜群で大人っぽい綺麗な顔立ちの素敵なお姉さんでした。

そんな姉たちはいつものように他の仲間達と夜遊びに繰り出し、車一台に5人乗り合わせ、外国人墓地に肝試しに行ったそう。

実際どんな肝試しだったのかは知る由もないのですが、若い男女の肝試しといって想像してしまうのは、自分はいかに肝が据わっているのかと虚勢を張るようにふざけ合い、じゃれ合い、騒ぎ立て、そして静かに眠る者たちを目覚めさせてしまう・・・。

そういったところでしょうか。そんな肝試しの帰り道、5人を乗せた、いや、もしかしたら他にも連れてきていたのかもしれない車は、道路脇の電柱に激突し5人中3人の死者を出してしまいました。

幸い私の姉は命をとりとめたものの、車から投げ出され、顔に大きな傷を負い、骨盤も骨折する重傷でした。

翌朝、何も知らず朝までぐっすり寝ていた私は、母から「お姉ちゃん事故に遭って、入院してる。今、手術して集中治療室。Aちゃんは死んじゃった。」と、聞かされました。いつも寝起きの悪い私も、さすがに一気に目が覚めました。

病院に行っても私は子供なので面会はできませんでした。数日後、徐々に回復してきた姉は一般病棟に移ったのですが、顔は10センチ以上ある傷を針で縫い合わせられ大きく腫れあがり、髪の毛は摩擦で溶けたり、血が固まって大きな塊になっていました。

その時も、姉はまだAちゃんの死を知らされていませんでした。

入院期間がどれ程だったか記憶にないのですが、姉は無事退院し家に帰ってきました。それからです。私は普段夜中に起きることなく朝までぐっすり眠るタイプだったのですが、ある日、二階にある自分のベッドで寝ていると、珍しく夜中にふと目が覚め「トイレ行きたい」と1階にあるトイレに向かおうと体を起こそうとしたその時。

静まり返る家の玄関の戸が激しい音を立て、ガラガラガラ!ガシャン!と開いて閉まる。間を開けず今度はドンドンドンドン!と階段を駆け上がる音。私は普段とは違う出来事に「え!何?誰!?」と驚き飛び上がり、しばらく様子をうかがう。何の音もしない。

私は恐る恐る部屋の戸を開け、階段を覗く。誰もいない。また姉が夜遊びして帰ってきたのかな?それにしてもあんなに大きな音を立てて、誰かと喧嘩でもして来たのかな?と思いながら、姉の部屋を覗くと、予想とは違い、部屋着を着て口を開けて寝てる。「あれ?・・・じゃあ誰?」 もう怖くなって、そんな階段を降りてトイレになんて行けるわけがないと、焦って自分の部屋に戻りベッドに潜り込みました。

そうしているうちに、そこはやはり子供で、体が温かくなりまた朝まで寝てしまったのです。朝になり、ボーっとした頭で「あの出来事は何だったんだ」「いやいや、夢だったのかも」と恐怖の出来事を何とか誤魔化そうと、わざと記憶をあやふやなままにしていました。

そしてその後も何事もなかったかのように日々を過ごしていると、母が「今日、お母さん家に一人だったんだけど、玄関が開いて階段を上っていく音がしたから「誰か帰ってきたのー?」って声かけたんだけど誰もいなくて」という話をして来た。あれ?なんかその話、聞き覚えが・・・。嘘でしょ。やめてよ。

すると、その話を姉も聞いていて「私もこの間、家に一人でいるとき同じような事があって「誰か帰って来たなー」と思ったら誰もいなかった」と言い出した。これはもう、私もこの間のことを言うしかなかった。お互い顔を見合わせ、その正体に思い当たる人物は一人しかいなく、顔を引きつらせながら笑う。「Aちゃん未だに遊びに来てるんだね」って私たちは妙に納得したのでした。