曰く付きの心霊スポットで体験した不思議な霊体験

不思議な体験談

大学生活の夏休み。暇だった私を先輩1(明るくていつも笑わせてくれる).2(とても穏やかで誰からも好かれる)が住み込みのアルバイトに誘ってくれました。とてもよく面倒を見てくれる先輩たちで、彼らと旅行気分でお金も稼げる良い機会だと思い快諾しました。

アルバイト先はとある貸別荘地帯の管理会社で私たちの主な業務は貸別荘の清掃でした。

先輩たちは高校生のころから夏休みにこのアルバイトをしており会社とは馴染みでした。清掃する別荘を回る車を運転するアルバイトが必要だったらしく(先輩たちは免許を持っていない)私に声がかかったそうです。
現場では私たちと同じような住み込みのアルバイト(もちろん女子大生も)や地元のパートの方もたくさんいました。

先輩たちのおかげで周囲も私に親切にしてくれ、大変楽しい時間でした。
何週間か経ち、地元アルバイト男子3名と住み込み女子大生アルバイト3名がある曰く付きの別荘に肝試しをすることになってました。
男子はa→「俺、霊感あるんスよ」イケイケタイプb→ネズミ男に似たお調子者c→すごく良い子 3人とも高校生

cが万が一の事態に備え、車を敷地内は自由に使える私に相談してきたことで肝試しの事を知りました。
私もあまり信じないタイプですがcを安心させるためにも「いつでも電話して」と対応しました。

その曰く付き別荘はずいぶん前に老人(男性)が首を吊って自殺した、その後も近くで老人の姿を見かける、などありきたりな話で私は全く信じていませんでした。
肝試し当日、私は緊急時対応のため事務所で待機してました。先輩たちは車を運転しないのでこの業務には参加せず、先に住み込み先に戻り私の食事の準備をしてくれていました。

夜10時頃、会社から「今日はこの辺で」の言葉を合図に私の携帯電話がなりました。cくんからでした。
早々にタイムカードを切り電話に出ると、「すみません…やっちゃいました汗」と困った様子。私は「すぐに向かうから!」と強く伝え車に乗り込みました。
途中、食事の準備をして待ってくれている先輩たちを思い出し慌てて電話をしました。
事情を聞いた先輩たちが「近道も知っているし、人手がいるかも知れないから俺たちを拾って行け」と何とも心強い言葉をもらい先輩たちと合流してから現場に向かいました。
予想していたよりも遥かに早く到着しました。

そこにはこちらに手を振るcくんと泣いている女の子たちがいました。

状況は、中に入ってしばらくするとbが突如発狂したかと思えば何かに怯え始めたそうです。
cくんと女の子たちを先輩1に任せ、私と先輩2で少しビビりながら中へ入りました。
入ると奥に膝を抱え震えているbと周りをキョロキョロと見渡ししているaがすぐに分かりました。
彼らを認識した私は少し大人ぶって「何も言わなくていいから、もう帰ろう」と声をかけ、bを起こそうとするもなかなか立ち上がらず手こずっていると、aが「あれ、いない…」と訳のわからないことを言い出したりしてイラつき始めた時でした。
「もーえぇ!!!」

先輩2が大きな怒鳴り声を上げました。今まで先輩2が怒っているところを見た事がなかった私はとても驚きましたが自分が思っているよりも良くない状況なんだと理解し、aとbを引きずりながら外へ出ました。
先輩2は怒ったまま、一人で歩いて行ってしまい、私が焦っていると、先輩1から「まぁ、この仕事長くしてるし迷子にはならないと思うから、ここを全員送ってから迎えに行こう」と諭され従いました。
肝試し組を全員送り終え、私たちの帰る方向に車を走らせました。
しばらく走ると、人っぽいものが歩いてる姿を見つけました。
私たちと同じ制服だったのでおそらく先輩2だろうと車を近づけます。
確実に先輩2と認識したとき、初めて先輩2の隣を歩く男性に気付きました。
先輩1はかなり前から気づいていたようで「たまにいるんだよ。夜道を散歩しようとした客が迷子になっちゃうこと。きっと制服を着た2を見つけて道を教えてもらったんだろう」
確かに私自身も数週間経ったとはいえまだまだ地図を頼りに移動するぐらい道は複雑。夜なら特にちょっと散歩のつもりが迷子に…ってこともあるだろうなぁと思い、お客さんも乗せて行く事を提案しようとした矢先、先輩1が「あ、ここら辺だったんだ」と一言。
ふと前を見直すと先輩2だけになっており、こちらにいつもの穏やかな表情で手を振っています。
私は安心し、先輩2を乗せて車を再度発進させました。
車中で
1「もう怒ってないの?」
2「…」
1「さっきの…お客さん?」
2「ん…?あー、そうだよ」
1、私「やっぱりそうだったんだ」
2「…」
2「ごめん、なにが?」
1、私「???」

先輩1は一人で確かに歩いていたらしく、先ほどの肝試しの流れから私たちが先輩2をからかおうとしていると思ったらしく、逆手に取ろうとして「そうだよ」と返答したとの事でした。
そうなると気になるのが先輩1と私が見た男性の招待です。先輩1は男性が先輩2と別れた場所も方向も見ている。
私たちは先ほどの事もあり、自制心と好奇心の葛藤の末「少しだけ…」と若い選択をしてしまいました。
先輩1の案内のもとあの男性が向かった方角へ車を走らせます。
軽自動車がやっと一台通れる程に木が空いており、分かれ道はなくそのまま道なりへと走ります。
先輩たちも知らない道らしく注意して走りました。
しばらくすると車のヘッドライトが何も照らさなくなりました。この道で初めてのT字路でこの道の終わりでした。

私たちは周囲を見るため車から降りようとしましたがすぐに気付き再び着席しました。
到着した場所は先ほどまで肝試しが行われていた別荘でした。
私たちはすぐに安全運転で私たちの住み込み別荘へと無言のまま戻りました。
翌日私たちは休みで、車を敷地外で使用するための書類を書きに事務所へ寄りました。
私たちを発見した肝試し組が申し訳なさそうに近寄って来ました。
私たちはいつものように彼らと接しすぐにいつも通りの和気あいあいとした雰囲気に戻りました。

するとaが先輩2に「あの後、大丈夫でしたかぁ?」
私は思い出しました。bを起こそうとしている時に言ったaの訳のわからない言葉。
aは続けます。
「あの時ぃ、俺ぇお化けのじいさんに周りうろつかれててぇ、身動きとれなかったんスよぉ。そしたら2くんらが来てぇ、そのじいさん見失ったんスよねぇ」