幼稚園に通っていた頃、お泊まり保育というものがあった。昼間はウォークラリーをしたり、スイカ割りをしたりと楽しいイベントが行われた。夜寝る頃になり、大広間で全員で布団を並べて寝ることになった。
先生と園児を含めて60人くらいはいただろうか。私は幼い頃、自分の家以外では全く眠ることのできない子であった。
案の定、お泊り保育の夜も全く眠ることができなかった。私は友人に誘われ、部屋の端のトイレ近くのところで寝ることにした。部屋の電気は消え、トイレの電気だけがついていた。
周りはみんな眠っているのに、私は全く眠ることができなかった。焦って何度寝返りをうったかわからない。
早く家に帰りたいと思いながら、横を向いてぼーっとしていたときだった。突然目の前に人が倒れてきたのだ。とてもびっくりした。
髪が長く、前髪の隙間から大きく開いた目が印象的であった。本当に顔が近かったため、目と髪の毛しか見えなかった。私は見回りでもしていた先生が私が寝ていないのを見つけて、怒るために私の目の前に倒れてきたのだと思った。
怒られたくないと思い、反対側を向いて目を閉じて寝ているフリをした。すると、私は眠ってしまったようで、次に目を開けた時には朝だった。
しかし、私が目を開けると、私を囲むようにして、周りに先生や園児たちがいたのである。
先生にはいつになっても目を開けないからどうしたのかと思ったと言われた。友人からもいつまで寝てるのと嫌味のようなものを言われた。急いで布団を片付け着替えを済まし、朝の会に参加した。みんなで森のくまさんを歌っている時だった。
気持ちが悪いのである。立っていられないほど気持ちが悪くしゃがみこんでしまった。先生は何してるの立ちなさいと厳しいことを言ってきた。寝坊に続けて私をサボリ魔だと思ったのか優しくはしてくれなかった。
その後朝ごはんを食べるため食堂に向かった。気持ち悪さは収まらず、食事中に吐いてしまった。先生が嘔吐物で汚れた私の服を着替えさせるために廊下の流し台のところへ連れて行ってくれた。
私はその時先生に聞いてみた。昨日の夜私の布団のところへ来たかどうか。先生は知らないと言った。私はきっと違う先生だったのだろうと思い、着替えを済ませ、その日のお泊り保育のイベントに参加をした。
夜の出来事のことは考えないようにしていた。そしてある日ふとお泊り保育に参加していた先生のことを考えた。おかしいことに気づいた。私の幼稚園にいた先生は皆目が小さく、一重の人が多かったのだ。いまだにあの夜倒れてきた人が誰なのかわからない。