恐怖の体験をしたのは 私が小学校3年生の夏休み、お盆のことです。母と出掛けた帰りに通りがかった、小さなお地蔵さんがきっかけでした。普段は何も気にせず通り過ぎていましたが、その時は なんとなく ただの気まぐれでそのお地蔵様に手を合わせ、「お元気ですか。」と声をかけました。
そして、通り過ぎました。しばらく歩いていると後ろに何かを感じ振り向くと、下を向いた女の人が少し離れたところにいました。
どうやら私達の後を付いてきているようで、母に「どうしてあの女の人はずっと下を向いているの?なんでついてきてるのかな。」と聞くと母は辺りを見渡し、「その人はどこにいるの?」と聞くので 後ろにいるよ、と答えました。
母は後ろを振り向き、私を見ました。
そういう冗談は面白くない。怖いからやめて。」少し気味が悪そうに母は私に言いました。冗談じゃないのに、と私は悔しく思いました。その後、家に着いたときは女の人はいなかったので 私はすっかりその女の人を忘れ、次の日 母と妹と近所のプールに行きました。
「妹はまだ幼稚園生だったので、私の腰のあたりの水深で一緒に遊んでいました。そのとき急に足を引っ張られ 沈みました。足が着くはずのところで足をつくことができず、立ち上がることも声をあげることもできませんでした。
足を自由に動かすことができなかったのです。溺れているところを母が腕をひっぱったところで やっと初めて立つことができました。
「なんでこんな浅いところで溺れるの。なんで溺れたの?」母に聞かれ、足を何かに引っ張られたと言っても、私と妹の周りに近づいたひとはいなかった、というのです。
妹も私に触ったりした人はいなかった、といいます。結局私が勝手に溺れたことにされてしまいましたが、あの時は何かに足を引っ張られて 自分の意思で動かすことができなかったのを覚えています。
プールに行った次の日、私は1人で本屋さんに行こうと思い自転車に乗りました。その帰りのことです。自転車に乗って走っていたとき、何もない平な道路で自転車が回転して転びました。私は吹き飛ばされましたが ケガはなく、飛ばされた方向におじさんがいたことで おじさんにぶつかり車道には行かずに済みました。
おじさんは「大丈夫?自転車何もないのにすごい回転したね。どうしたんだろう。お盆だからかな?ケガはない?気をつけて帰ってね。」お盆だからかな…そのおじさんの言葉が妙に心に残り、母にあったことを伝えました。
そして、その夜 金縛りに会いました。どうしても動けずにいると部屋の入口にあの女の人が立っていたのに気づいて、私は「来ないで!!」と叫ぶといなくなりました。それっきり、何度かプールに行きましたが 急に溺れることも、不自然に転ぶこともなくなりました。
後日、母に聞いたことですが私が「お元気ですか。」と声をかけたお地蔵さんは 前に交通事故があったところで、もう事故が起こらないように、と建てられたものでした。亡くなったのも女の人だったそうで 「お盆だったから声かけられて、付いて来ちゃったのかもね。」と言われ怖くなりました。