祖父が死んだ新盆でのことだった。新盆初日のその日はお墓に行って祖父のお迎えをした。帰り道の車の中で生前の祖父の話で盛り上がった。
「お爺ちゃんは朝早く車で出掛けて夜遅く帰って来て、本当に家にいない人だった」
「社交ダンスと女性が大好きだった」「よく鼻歌歌ってたよね」「お爺ちゃんは今で言うフリーターだったんだよね?」など祖父の破天荒な話しを皆でした。
夕飯の時にも「浮気して京都まで駆け落ちしようとしてた」「未亡人の女の人と仲良かった」など更に破天荒どころかクズな話しにまでなった。
そこで私が「今日、お迎え行ったけど爺ちゃんのことだからお墓になんていないんじゃないの」と言ったら皆笑って「そうかもね~」と話しをしていた。そして、夜に私は祖父の夢を見たのだった。
祖父は黄色い外車らしき車を駐車場でいじっていた。
「何してるの?」と聞くとニコッと笑って「出掛けるの」と。続けて「これでもずっと居たんだからな。お迎えありがとう。」と言われた。
「でも、出掛けちゃうの?」と聞くと
「出掛けちゃうの。これ、動くようにしてからな。」祖父は赤い工具箱から何か出して作業していた。私は呆然と祖父を見つめていた。祖父はため息をついた後に道具をしまい始め車に乗り込むとエンジンを掛けた。
ブルルンッッッ!とそこそこ凄い音がした。「じゃあ俺、出掛けるから!皆の様子見てくる!戻るか分からない。最悪、自分で帰るから大丈夫だ!」と大声で言われました。
私も「行ってらっしゃい!!」と大きな声で答え目が覚めました。目覚めた私はどうしても夢の中の祖父が気になって仕方ありませんでした。何気なく仏間に行くと仏壇には黄色いパプリカが置かれているではありませんか。しかし、そのままの状態で置いてありナスなどのように爪楊枝を刺して足を作ったりはしていませんでした。
これでは動かないのでは?と思ったのですが「だからお爺ちゃんは車をいじっていたのか!」と瞬時に納得しました。祖父の乗っていた車は左ハンドルだったので外車です。「このパプリカ、外国産か。」私はひとり仏壇の前で笑いを堪えました。
そういえば「自分で帰る」とか言ってたなぁ、お爺ちゃんらしいなと思いながらお線香をあげました。ちなみに置いてあった黄色いパプリカですが私の母が置いたよで「なんだか置いた方がいい気がした」「別に置いた理由なんかない」と言っていました。祖父が置かせたのか何となく母が置いただけなのかは分かりませんが私的には面白い体験だったなと思いました。