怖話短編集

恐怖の心霊現象から感動して笑える心霊体験など今まで見たこともない不思議な怖い実話エピソードが満載

恐怖の心霊体験談

田舎にいるはずの英太くんがうちにきた話

田舎の英太くん
子どものころ、お盆になると必ず家族で田舎の祖母の家に行っていました。
近所には私より二歳年上の英太くんという子どもがいて、私はいつも英太くんに遊んでもらいました。英太くんにひっついて山に行ったり、川に行ったりと、田舎での毎日はいつも楽しかったのをよく覚えています。

私が小学六年生になった夏のことでした。その年もおばあちゃんの田舎への旅行計画中に英太くんのお母さんから電話がありました。

田舎にいるはずの英太くんがうちにきた話の画像

旅行準備が完全に止まって、つまらなくなった私は、まだ日中ということもあって外に遊びに行きました。いつもの公園へ行くと、なぜか英太くんがいるのです。英太くんの家は北陸、うちは関西です。中学生が勝手に出て来れる距離ではありませんが、私は英太くんを見るとうれしくなってそのまま駆け寄っていきました。

どうしたの、と聞いてみましたが、英太くんは何も返事をしてくれません。代わりに、私をブランコにのせて後ろから押してくれました。田舎にはブランコがあるのような公園はなかったので、この遊びがとても新鮮です。もっともっととせがんで一人騒いでいるうちに、公園の入口に母が走って入ってきました。

母は私が英太くんのことを言う前に、真っ青な顔で今年はおばあちゃんちに行かないと言います。どうして行かないのか聞いても教えてくれません。そうして、私を無理矢理ひっぱって帰ろうとします。

英太くんが来てる、と言うと、母はいっそう強く私の手を引きました。振り返ることもなく公園をあとにして英太くんを置いてけぼりにしてしまったのです。
その日のうちに私は近所に住んでいる母方の祖父母の家に預けられました。行かないと言ったのに、母と父だけ田舎のおばあちゃんの家に行ってしまったのです。納得がいかなくて癇癪を起した私は、怒りつかれて早くから寝入っていました。

夜中にふと目覚めると枕元に英太くんがいたのです。彼がどうやって入ってきたのか、そういうことは考えもしませんでした。

明日になったら私が地元を案内してあげようと言おうとしましたが、声が出ません。

明日になったら私が地元を案内の画像

英太くんを見ると、彼はそっと私の手を握りました。あたたかかったのか、それともなにも感じなかったのか、今はもうわかりません。手を握られた後、ぐっと引き上げるように強く引っ張られます。

えっ、と思っているうちにぐいぐい布団の上へ上へひきずられていきます。なんとか首を上げて見ると、真っ暗な部屋の中、さらに暗い穴のようなものが壁に浮かんでいるように見えました。その穴がとてつもなく恐ろしくて、そこへ私をひきずって行こうとする英太くんが、本物の英太くんであるはずがありません。
気付くと、私はぎゃああ!と大声で叫んでいました。暴れようとしましたが、体はなぜか動きません。声もその一度っきりで、もう出ませんでした。

けれど、その声で起きた祖父母が二階の寝室から大慌てで降りて来てくれました。パッと電気がついて、びっくりしている祖父の顔が見えました。
英太くんの姿はどこにもありません。ただ、私は布団からひきずりだされて、あのくらい穴のあった壁の近くで大泣きしていました。
大好きだった英太くんの姿をしたなにかが、私をどこかへ連れ去ろうとしたのが怖くて怖くて、そしてショックでした。

その日は、祖父母の部屋でなんとか寝付きましたが、翌日もひとりになるのはこわくてできませんでした。
そうして、三日後に帰ってきた両親と一緒に自宅へ帰ったのですが、両親は暗い顔で田舎のおばあちゃんの話もしてくれません。

英太くんは、と私は聞きました。どうしても、あの夜の英太くんが本物ではないと確証が欲しかったのです。けれど、両親は教えてくれませんでした。
そのまま、次の年も、その次も、田舎へは行きませんでした。三年目になって、ようやく母が、今年は英太くんの三回忌だから行こうね、と言って、ようやく私は英太くんが亡くなっていたのを知りました。
あの夜、私の手がひっぱられたとき、すでに英太くんはもう亡くなっていたのです。

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