夏の終わりの9月中旬だったと思います。その日は仕事も少なく順調にスムーズに進みました。久々の定時上りができそうで次の日から連休。家族で旅行がありもう楽しみでした。しかし、一本の電話が鳴りました。それはクレームの電話でした。
数年前、私はある支店で仕事をしていました。
あるお客様でした。定期的に我が社の商品を利用してくれる温厚なお客様でした。ですが、この日は違いました。電話から聞こえる大きな怒鳴り声が響いてきました。
それは女性社員のTさんが、お客様の家に行った際に必ず渡さなければならない書類を忘れていたこと。Tさんが持ってきた商品のレシートの金額が彼女が間違えて打ち、全くの金額相違とおつりが足りず。それとお客様は海外旅行に出かけるため夜には家を離れるのでそれまでにもってこいとの怒りの電話でした。
当然のお怒りでした。本来上司達が行かねばなりませんでしたが出張や他の業務に対応しており手薄でした。
他の人に頼まれ私はべそをかいて困っているTさんを助けるために一緒に行くことに決めて準備しました。
書類、修正のレシート等速やかに用意して会社を出ました。お客様の家は会社から車で約20分くらいの山の入り口に近い場所でした。
私はその付近は担当外であまり行ったことの無い場所でした。車のナビとTさんの指示に従いお客様の家に向かいました。
この日は天気は晴れで真夏よりは暑くない日でした。天気予報も降水確率0%でした。
17時頃出発し、クレームの謝罪等計算しても約1時間くらいで戻り18時以降には帰れるだろうと計算してました。
ですが、怖い体験をするとはこの時は全く思ってもいませんでした…
私は車を走らせTさんと話や打ち合わせしながらあと5分ほどで到着する所でした。トンネルを通過する手前でした。それまでなかった雲と突然の激しい雨が降りました。
あれ、天気晴れなのにゲリラ豪雨?
と思いながらもトンネルに入りました。
するとトンネル内に入った途端急激に寒さを覚えました。最初はエアコンかなと思いましたが温度はそんなに低くしてませんでした。
そしてカーナビのディスプレイの画面が突然真っ暗になりました。
「え、何で?!」と思わず声を出してしまいました。故障かなと思いました。トンネル内には対向車や後続車は夕方なのにこの時何故かいませんでした。
助手席にはTさんがいて後ろの席には書類が置いてありました。トンネルを抜ける際でした。
ふと、ミラーを見るとよくわかりませんが白い輪郭というか煙っぽい物が後部座席に見えました。
トンネルを抜けると雨は降っていなくて晴れ、後部の煙は全くありませんでした。夕日が綺麗でした。しかもカーナビは再び画面が明るくなり正常に位置情報も正確でした。
しばらくしてお客様の家に到着。Tさんと共に謝罪しました。
お客様は玄関前にトラベルケースや車で直ぐに出れる準備をしてましたが、電話とは違い意外に起こっていなくて謝罪したら直ぐに許してくれました。意外でした。
書類とレシートを渡し去ろうとした時です。お客様夫婦は言いました。
「あんた達、この時期帰る際はほんとーに気をつけなよ。直ぐに帰るんだよ!寄り道しちゃだめだよ!」と何故か念押しして言いました。
なんでだろうと心の中で思いながらも私達は去りました。
車に乗り出発し、1、2分経った頃でしょうか。
助手席にいるTさんの様子が変でした。お客様の対応で疲れちゃったのかな~と思い励ましの声でもかけてやろうかとしました。Tさんは顔色が暗くて突然咳をしだしました。激しいでした。私は大丈夫かと聞きました。
「あ、はい、す、すいませ…ゼヒュ…」彼女は喘息もちで発作が起きました。私は路肩に車を停めてやりました。
Tさんはバックから薬を取り飲みペットボトルの水を飲みました。たまに発作でその光景を何度か見ていたので飲んだら大体落ち着いてました。
が、この日は違いました。彼女の身体が激しく小刻みに寒さに震えたように動き咳が止まりませんでした。
何か変だぞと思いながらTさんを見ました。彼女の額から汗が滝のように流れ、唇が何故か青ざめてました。
私は病院に行った方がいいなと思いスマホを取り会社と病院に連絡しようとしました。ですが、電波のアンテナが繋がったり消えたり点滅。繋がりにくいところなのかと思いせき込むTさんに断わり電波の繋がる場所まで走るといい車を動かしました。
走ると晴れていたのにまた突然の豪雨でした。この時エアコンは付けてませんでしたがまた急激な寒さが襲ってきました。夏というより冬並みの寒さを覚えました。
私もハンドルの指先が冷えました。とにかく冷たかったです。が、Tさんを何とかしてやらないとと思い我慢して車を走らせました。
途中でまた車のナビの画面が暗く消えました。こんな時にかよと思いながらも車を停めました。
そろそろ電話がつながるかな共思いましたが圏外。その先にはトンネルが見えました。もう通過してから掛けるしかないなと思い車を再び出しました。
Tさんは咳が止まらず低く蹲ってました。
私もなんだか首の辺りや二の腕が重りを乗っけられたように重くて怠くきっつくなってました。
前日の睡眠もしっかりしたし、そんなに今日は疲れがないのにおかしい。病気でもないし。と思いながらトンネルに入りました。
トンネル内は息よりも寒く、私も思わず震えて口がガタガタなりました。
暖房を付けようと思った時でした。片手が何故かスイッチまで伸びません。重くて何かがまとわりついているかのように気色悪かったです。
ピタッ
私の首筋を何かが触っていきました。車内にはTさんと私しかいません。冷たく濡れた手を付けられたような感触でした。
私は運転席の窓をふと見ました。そこには白い手形のようなものがくっきり映ってたのです。そして恐る恐るミラーで後部座席を見ると…顔は見えませんが髪の長い女性が白い服着ていました。
私は怖くなり必死にアクセルを少し踏み加速。後ろを見ずにとにかく前だけ見て走りました。
トンネルを何とか抜けると目の前には夕日が沈むところでした。
助手席のTさんは発作が治まり何故かもとに戻って元気そうに回復してました。私も体の重さもなく、ガラスの手形も消えていました。
カーナビの画面も元に戻り、温度も寒くなく普通。返ってちょっと熱くなってました。Tさんも病院にいかなくていいと言ったので会社に突き後部座席を見ると何故か水にぬれたような跡があり私は気味悪くなって鍵をかけてでました。
家に帰るまで気分が気味悪く落ち着きませんでした。
連休後、私は会社にはカーナビが消えたことを話していたので修理を依頼しました。しかし、カーナビは営業車と共に購入した新車で3カ月しかたってないし故障なし。
おかしいと思いました。
その後、旅行から帰ってきたお客様から電話がありTが居なかったので私が出て対応しました。するとお客様から「あの日帰り大丈夫だったかい?」と言われ私は思わず信じてもらえないかもしれないがあった事を話しました。
するとお客様は「昔、その日にね当時そこに住んでいた娘さんが男性との結婚の許しを貰いに行ったが親に断られ家を出て行った際に車にはねられ即死。それからその日は変なことが起きる。女性の姿を見る人多いんだ。私達も何度も見てるんだ。気がめいるからこの時期旅行に行くんだわ。」と教えてもらいゾッとしました。
今は結婚して会社を去ったTさんも当時、トンネルに入る時何か女性の声が聞こえて体にまとわりついた感覚をしたと言ってました。彼女は霊感が強くてよく怖い体験を幼い時から経験していたそうで。それで気持ち悪くなり発作が出たのだと…。今では私も転勤し別の支店に行きましたがもうその付近は二度と行きたくありません。
その日に怖い経験を今でもしている人がいるのでしょうか?