「次のページがめくれない」耳の奥で人の声を聞いた不思議な話

不思議な体験談

中学生の頃の話です。夜寝る前に漫画を読んでいたいた時、いわゆる金縛りにあいました。ページをめくろうとしても、指が急に動かなくなったのです。横向きで寝ていて、右肩が上側になっていたので、筋肉収縮が固まって吊ったのかな?と初めは思っていました。

「大丈夫、大丈夫、吊っただけ。ゆっくり、緊張しないで・・」

心の中でも、「大丈夫、大丈夫、吊っただけ。ゆっくり、緊張しないで・・」と自分に暗示をかけるように、焦らないように気持ちをコントロールしようとしました。
それでも動かない。
そのうち、左手も動かない事に気づき、これはおかしいと思い、声を出そうと試みました。

その当時、4歳下の妹と同室で二段ベッドだったのです。
声も出ない・・。
「助けて!苦しい」そんな思いを心に強く思いながら何もできない状態が5分くらい続きました。

当然、漫画を読んでいたので、部屋は明るかったのに、ふと自分の周りだけが暗くなったような気がして、でも、体の向きを変えたりするのも出来ない状態。焦りはつのるばかりでした。

上段では妹の寝息。と言うことは、この状態は私だけ?
そのうち、耳の奥から、ざわざわするような雑音が聞こえてきました。
よく、トンネルや山道を走っていると耳がぼーっとするような事があると思いますが、あんな感じで、ずーっとノイズかかかったような状態。唾を飲み込んでも変わらない。

その時、急に大人の男性の声が聞こえてきました。

「もう、ダメだ、ダメだ・・」

映像が浮かび上がるような、その男性の置かれている状況が「ぱっ!」と脳裏に浮かびました。ネクタイを手に持ったグレーのスーツを着た、背中が寂しそうな姿の50代位の男性。

ああ・・これは金縛りなんだと気づきました。
それからしばらくは、小さな男の子が泣きながら、「お母さん、お母さん」って言ってたり、女性が「ご飯作らなきゃ」って自転車乗りながら急いでいる姿だったり。走馬灯のように、矢継ぎ早に映像が浮かび、消え去っていきました。

時間にしては5分10分の事だったかと思います。
映像が消えた後、
「私は何も出来ない!ごめんなさい!向こういって!ウルサイ!」って心臓を絞るように強く念じました。
「パン!」って耳の奥から音がして、金縛りはようやく解けたのです。

その後も中学卒業までは、週1程度で金縛りにあい続けました。
こういった心霊現象は、動物の野生のカンに近い幼少期によく起こるそうです。
金縛りの場合、神経と筋肉の伝達がうまくいかない症状として説明される時がありますが、私の体験はそういった事とは違うかと思います。

怖くはないんですが、毎週金縛りにあったのは、きっと、その部屋が「霊の通り道」になっていたからかもしれません。
その部屋だけ、マンションの中でも結露やカビがひどく、寒い部屋で、冬は吐く息が白かったなと記憶をしています。