私が幼いころ、近所のおばさんの家に飾られていた大きなひな人形。ある日、弟とおばさんの家に遊びに行ったときの話です。たまたま少しの時間だけ大人がいなくなってしまい、留守番をしていたときにお雛様が泣いたのです。
私がまだ3~4歳のころだったと思います
玄関をでて1分のもしないところに一人暮らしのおばさんがいました。
そのおばさんは母ととても仲が良く、お互いの家をしょっちゅう行ったり来たりしていたので私もよく可愛がってもらっていました。
ある日おばさんの家に大きなお雛様が飾られているので一緒に見に行こうと母に誘われ、1歳年下の弟を連れて3人で遊びに行きました。
おばさん宅の玄関先に飾られていたお雛様は本当に大きく、小さい子供ほどの大きさで私と背丈があまり変わりませんでした。
すごいねぇ、おおきいねぇ、と感心して眺めていたのですが、しばらくして母とおばさんが何かの用事で家を出てっ行ってしまい、残された私と弟は二人で大きなお雛様を恐々と眺めていたのです。
するとその時、お雛様が「キーーーーーン!!」と泣きました。
表情も変わらず一点を見据えた姿は本当に不気味で、まさかと思い固まっていると、もう一度キーーーーン!と泣きました。
正しくはヒーーーンだったかもしれませんが
驚いた私たちは泣きながら自宅に走り戻ったのです。
母とおばさんはそのとき自宅にいたようで、異様に泣きじゃくる私たちに気づいてあわてて玄関に飛び出てきました。
弟とふたりでその出来事を一生懸命に説明したのですが信じてもらえず、結局は子供の勘違いで片づけられてしまったのです。
それから数十年、私も子を持つ母になりました。
父も母も他界し、弟にあの出来事の記憶は全くないようで、私もきっと夢と現実を勘違いしていたのだろうと思うようになっていました。
実際、あのお雛様を知っている人もいませんでしたし。
が先日、姉から耳を疑う事を聞きました。
両親とも亡くなり遺品整理をしていたときに姉から
あの大きなお雛様はどうしたんだろうね、という言葉を聞いたとき、サーーーと背筋が凍りました。
姉は私と10以上年が離れていて、あの出来事があったときはもうすでに嫁いでいました。
その大きなお雛様というのはもともと我が家にあったものだそうで、姉も嫁いでからはその存在を忘れていたそうです。
背格好も私が見たものと変わりなく、やっぱりあれは夢ではなかったんだと確信しました。
結局お雛様は誰のもので、どこにいったのかを知る人はもうこの世には存在しません。ただ私に何かを伝えたくて、あの時サインを送ってきたのかなと思いました。
今でも記憶に残っているのは私と姉だけで、うすぼんやりとした話ですがどなたかに聞いてほしくて書いてみました。