洒落怖の名作「巨頭オ」「イトウって知ってる?」「握手」

洒落にならない怖い話

洒落怖名作の「巨頭オ」「イトウって知ってる?」「握手」の怖いストーリーを紹介。巨頭オは治外法権のある地域に迷い込んだ不思議で怖い話です。イトウって知ってる?は語り手の周りにいる同級生の不思議な話です。握手は本格的な怖いストーリーを求めている方におすすめです。恐怖の洒落怖体験談を猫と犬で語ります。

洒落怖の名作「巨頭オ」

数年前、ふとある村の事を思い出した。
一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。
心のこもったもてなしが印象的だったが、なぜか急に行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。
記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。
村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたときあれっと思った。
『この先○○km』となっていた(と思う)のが、『巨頭オ』になっていた。
変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。

車で入ってみると村は廃村になっており、建物にも草が巻きついていた。
車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、頭がやたら大きい人間?が出てきた。
え?え?とか思っていると、周りにもいっぱいいる!
しかもキモい動きで追いかけてきた・・・。
両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。
車から降りないでよかった。
恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

帰って地図を見ても、数年前に行った村と、その日行った場所は間違っていなかった。
だが、もう一度行こうとは思わない。

洒落怖の名作「イトウって知ってる?」

高校から今にかけて、俺の周りをウロチョロする謎の同級生がいる。

高1の時に言われたのが一番最初。
夏休み明け直後の日だったんだが、いきなりクラスの奴に「イトウって知ってる?」って言われた。
「イトウ?知らないなぁ」
「何言ってるんだよお前と同級生だろ?地元の友達だろ?」
「いや、しらんし」

数日後・・・
「やっぱりイトウって知ってるだろ?アイツお前と仲よかったらしいぞ」
「だから知らないって・・・」
「しらばっくれるなよ!」
「はぁ?そんな奴いないつぅの!」
それでケンカになった。

そいつは俺に薄情だと言う。
俺は知らない奴を知ってる奴だと言われて、なんかシャクに触ったのでキレた。
まぁ若い頃だから血の気は多いとして、それでもクラスの奴は異常にキレた。
家に帰って、卒業アルバムを小学校の頃から調べたけど、やっぱりイトウなんていなかった。

結局、ソイツとはそれ以来口を聞くことはなくなり転校していった。
変なわだかまりが残ったけど、しばらくイトウの名を忘れてた。

それから学年が変わって高2になった頃、またイトウの名を耳にする。
今度は部活が一緒だった隣のクラスの奴。
「なぁ、イトウって知ってる?お前と同じ中学なんだろ?」
「いや知らないって・・・」
「だってさ、お前と同じ部活で、三年間一緒だったっていってたよ」
「はぁ?ちょっとどういう知り合いなのか、詳しく教えてくれよ」
久々にその名前を聞いていやなことを思いだしたけど、正体が知りたくて詳しく聞いてみた。
「女だよ、背の低いさ・・・友達の友達なんだよね、こないだそいつとカラオケ行ってさ、ノリのいい奴」
「いや・・・知らない・・・女ならなおさら知らない・・・」
「マジ・・・?連れてきてやるよ。本当にイトウ、お前のこと詳しいから・・・」
俺、そこら辺で怖くなったよ。本当にどんなに記憶をたどっても、知らない奴なんだから。
わりと聞く名前だけど、イトウなんて同級生は一人もいない。

それから数日して、
「お前に会わせようとしたイトウさ・・・いなくなったらしい」
「え?なんで?」
「わからん。突然、家を捨てて、夜逃げみたいな感じだったって・・・」
俺「・・・」

次、イトウは意外なところで現れる。

地元の友達が、
「なぁイトウって同級生いたっけ?」
「いない!お前も『知ってる?』とかいわれるの?」
「お前も!!」
俺らの地元のグループで話題になった、イトウとかいうおかしな奴が、俺らの知り合いだと言う。
この現象は俺だけじゃなくて、周辺の友達に波及して、三人同じ体験をした奴がいた。
それも、三人とも違う高校で、全く別々の友達から聞いた話しだった。
「怖いな・・・マジ、イトウって誰だよ?」
「俺が聞きてぇよ!!」

同窓会でそのことをみんなに聞いたが、誰も知らなかった。
ただ、連絡がつかない奴の中で、イトウって苗字になった奴はいたかもしれないが、それも確認できたわけじゃなかった。

それから半年くらいして、今度は幼馴染の従姉妹が、
「ねぇ、イトウって知ってる?」
ゾッとした。いつものイトウの話しだった。
背の低い女で、俺と同じ部活で、仲の良い友達だったイトウ。
従姉妹は俺のことをよく知っている。
「イトウなんて・・・いないよね?・・・」
「いない・・・」

それから数年間、イトウは姿を消す。
イトウのことは、頭の片隅くらいにしか残らない存在になっていた。

大学卒業間近バイト先で、
「なぁ、イトウって知ってる?」
その場に倒れそうになったよ。
「背の低い女で、俺と部活が同じの?」
「そうそうwやっぱり知り合いなんだw」
「今も連絡とってるの?」
「あぁ、高校のときの部活の知り合いで・・・」
コイツは俺とタメで、高校のときの知り合いなら、イトウはその頃行方不明だったはずなんだけど・・・
「今さ!ソイツと連絡つかない?」
「あぁ、つくよ!イトウも今度飲みたいって言ってたし、ちょうどいいよ」

携帯電話の先からイトウの声が聞こえる。
「もしもしぃ」
「今さ、・・・うんうん」
かすかにだけどイトウの声が聞こえる。
実在する人物なんだ!
「悪い・・・イトウさ、なんか具合悪いからって、電話切られた・・・」
「そうか・・・じゃあ、また今度頼むよ」

次こそはイトウと話す。

次にバイトいったとき、イトウの知り合いだと言う奴の態度が急変した。
俺が何を話しかけてもシカト。
軽いいじめみたいな感じの雰囲気になってた。
なぜかバイト先の奴からハブられる俺。

その日の帰りに、店長にクビを言い渡された。
文句は言ったが、「悪いがしばらくこないでくれ」の一点張り。
気がついたら、そのバイト先は潰れてた。
結局、イトウとの接点は無くなった。

最初に俺にイトウの話をふったクラスの奴もいなくなり、次の部活の奴も、その後退学になった。
三人の同級生とも疎遠になった。
三人とも良い噂を聞かなかった。今はどうなったから完全にわからない。
従姉妹もその後精神的に病んで、今は話せる状態じゃない。

結局、イトウのことに関してはわからずじまいだったのかな・・・・
なんて思ってたら先週、彼女が「イトウって知ってる?」。
まだイトウは、俺の周りをチョロチョロしてるのかもしれない。

洒落怖の名作「握手」

ごく親しい友人数人にしか話してない事なんだけどさ、ちと書いてみる。友人らにも一笑にふされたけどね。

オレってば結構、?っていう経験が多いのね。霊感がどうのとか分かんないけども。
そりゃ、真夜中の自室で後ろ向いたら首の無い人が佇んでました・・・なんてあからさまな経験は無いけどね。
変だなぁ・・・って思うような事はそこそこ体験してきた。
その内の一つ、今までで一番生きた心地がしなかった時の話。

当時・・・と言っても、もう8年も前の話。
オレと言えば、昼は仕事、夜は夜間の大学と、我ながら中々に苦学生してた。
そんなもんだから、学校終わったらもう深夜。
いつもは翌日の仕事に備えてサッと帰って、そのまま床に着くのだが、その日は土曜日。
翌日は休日なものだから、えっちらおっちらマイペースで自転車漕いでたのよね。
帰り道、道と言っても超が付くほどの田舎だから、田んぼの畦道の延長みたいな道だけどね、
結構、というかかなり不気味なんだよね。
想像してもらったら解るかもしれないけど、草木も眠る丑三つ時に、一人だだっ広い田舎道。
しかも周りには、マネキンの首などを使ったリアルなカカシがこちらを凝視してる。
まぁ、その頃にはとっくに慣れきっていたんだけどね。

帰路の途中、いつもなら見向きもしない自販機に目が止まったのは、
珍しく金銭的にも余裕があったからなのかな。別段喉も渇いてないのに。
田舎の人なら解るだろうけどさ、メジャーなメーカーの自販機じゃなくてね。
今で言うと、コーヒーの細長いロング缶あるでしょ?全部がそのサイズの自販機。
かなりアナクロナイズなやつだね。当たったらもう一本、なんていうおみくじ付き。
切れかかった電灯が発してたジジジ・・・という音がやけに耳に響いてた。

田舎の深夜なんて車通りもないから、信じられないくらい静かでさ、やけに小銭を投入する音が響いてた。
お金を入れてボタンを押したら、おみくじのランプが「ぴぴぴぴぴぴ・・」って鳴り始める。
シーンとした辺りに、そのチープな電子音がやけに不釣り合いで。
当たっても二本も飲めないしな・・・なんて苦笑しながら、ジュースを取ろうとしたんだけどさ、
自販機の切れかかった電灯の薄暗い明かりくらいしかないから、取り出し口なんてほとんど真っ暗で見えない。
ジュースはどこだ?と手探りで取り出し口内をまさぐってたらさ、握られたんだよね。手を。

意味解んないと思うけど。取りだし口の中で手を掴まれたの。ちょうど握手をするような形で。
一瞬頭が真っ白になった。
間違いなく人の手の感触だった。
しかもね、段々握る力が強くなってくるのよ。痛いくらいに。
そこで我に帰って、うわぁっと必死に手を振りほどいた。
相当強く握られてたのにあっさり手は抜けて、オレは半狂乱で自転車にかけ乗って、全力でその場を離れた。
混乱してたからハッキリとした記憶は無いんだけど、
その手の感触と、背中ごしに聞いた「ぴぴぴぴぴぴ・・・」という音だけは鮮明に覚えてる。
そういえば、おみくじなんてボタン押して5秒くらいで止まるのに、
何故かずっと「ぴぴぴぴぴぴ・・」って言ってたな・・・今考えると。

一人暮しの家に帰るなんてゾっとしたからさ、そのまま友人の家に転がりこんだよ。
で、その判断は大正解だった。一人だったら気が狂ってたかもしれない。
何故かって言うとさ、直んないのよ。手が。
握手の形のまま、そこだけ金縛りにあったかのように硬直してるんだよ。
友人もただ事ではないと思ったらしく、二人で朝まで頭の中で念仏を唱えてたら、
夜がふける頃に、急に何かから解き放たれるように硬直が解けたよ。

それからというもの、オレはどんな物にせよ、『口』になってる物に手を突っ込めなくなってしまった。
自販機はもちろん、郵便受けやポストなんかでさえ。
だってさぁ・・・『握手』・・・されるでしょ、また。多分・・・

この話には後日談があってね。今から二年前、握手から六年後だね。

法事のために田舎に帰省した時ね、あの時から一度も通った事なかったあの道。
(近道に使ってた裏道だったから、幸いにも卒業まで一度も通らずにすんだ)
なんでだろね。あれほど忘れようと思ってたトラウマのあの場所に、ちょっと行ってみようか、という気持ちになった。
理由は解んないけどさ、導かれるように・・・なんて言ったら安っぽくなっちゃうけど。

何かあったら嫌だな・・・と内心ビクビクしながら車を走らせてたらね、あっけない結末だった。
無かったんだよね、その自販機。
そりゃそうだよね。あの時ですらかなり古かったのに、あれから八年も経ってるんだから。
当然と言っちゃ当然なんだけど、何かさ、数年間に渡る呪縛から解き放たれたみたいで、心底ホっとした。
これで完全に忘れられるな、と思ってね。

せっかくの帰省なんだから、昔馴染みの連中と飲みに行ったよ。楽しかった。
ほんと、ここで話が終われば良かったんだけどね。

気分も良く、ほろ酔い加減になったオレは、みんなにこの話を聞いてもらおうと思った。
八年前は、思い出すのも言葉にするのも嫌だったから話せなかったんだけど。
多分ね、なんだそりゃって、皆に笑って欲しかったんだろうと思う。
それでオレも笑って、この忌まわしい記憶はおしまい。そうなってほしかった。そうなるはずだった。

つらつらと話してる途中でさ、友人の一人が「ちょっと待った」と、話の腰を折った。
「何?」とオレが聞いて返ってきた言葉は、オレの酔いを完全に覚めさせた。
聞かなきゃよかった。話さなけりゃよかった。何で話してしまったんだろう。何で。
そいつが言うに、
「あの道にそんな自販機なんか見た事ない」
他の四人も同様に口を合わせる。
おかしいぞ、おい、K。
お前はあの時、朝まで念仏を唱えてくれたじゃないか。
オレは卒倒しそうになった。あの時泊めてくれた友人のKまで、そんな自販機知らないと言う。
あの夜の事も覚えていなかった。

どう言ったらいいか分からないんだけどね。
オレ、段々とこの時の記憶が無くなっていってる事に気付いたんだよね。
なんていうかさ、夢って目が覚めた瞬間は覚えてるけど、
その記憶を持続させようとしても、ウソのように消えていっちゃうでしょ?夢の記憶。
ちょうどそんな感じでさ、オレほんとは、
あの時の自販機で何を買ったかとか、あの時の学校の授業は何だったとか、ハッキリ覚えてた。
でもほんと、ウソみたいに記憶から抜けていった。
忘れたくても忘れられるような事じゃないのに。
今ではもう、先に書いた事くらいしか記憶に残ってない。
何かの意思というか、そういう物を感じるんだよね、これ。

オレさ、変な予感があるんだけどさ、
完全にオレの中からこの記憶が無くなった時、
普通にまた何かの『口』に手を入れて、またされるんじゃないかと思う。
『握手』を。

以上です。長文失礼しました。
もっと細部まで書こうとしたのに、驚くほど記憶が消えてて恐いです。
ちなみに健忘性などではございませんので。
この事だけなんです。こんなのは。

(ふと「怖い話が読みたくなったな」と思い立って、久々にオカ板に来てこのスレを見つけて、>>1からしばらく読んでいました。
それまでは普通にガクブルだったんですが、>>422を読み終わった瞬間、泣いてしまったんです。なぜか。
話はとても怖かったけど、泣いたのは怖かったからではなく、
ただただ悲しかったのが伝わってきて、泣いてしまったのを覚えています。

(しかし、別に読むだけなら特に悲しい話では無いし、自分でも意味がわかりません。
当方男。深夜なので声は殺しましたが、気を抜くと号泣しそうでした。
涙腺がゆるいわけでも霊感があるわけでもないのに…なぜ?
何かのメッセージなんでしょうか、あるいは。

(あなたも体験してるけど、記憶を消されてるんじゃない?

感想ありがとうございます。

一つ、とても大事な事を書き忘れたので、書いておきます。
ていうか、忘れてたというのが恐いです。絶対にこれだけは忘れちゃいけないのに。

あの時、恐ろしく強く手を握られていたのに、あっさり抜けたのは、
私が持ってるお守りのおかげだと、今では思っているんです。
お守りと言っても、その方面に強かった祖母(故人ですが)の力と髪の毛が一本入ってるお手製の物なんですが。
「田舎には物の怪が多いから」と、祖母が生前に親戚筋へ配ったとか。
それはわが家にももちろんあり、私は交通安全くらいにはなるかなと、常備携帯してたのです。
祖母が守ってくれたんだなと、今では確信してます。
多分これがなかったら、放してもらえなかったと思う・・・手を。

このレスを書こうとした時に、ふと恐ろしい想像をしてしまったのですが、
そんな事ないと、誰が笑い飛ばしてほしい。

記憶が消えてってるのは、このお守りの存在を忘れさせようとしてるのではないか。
あの日から常に肌身離さず携帯してるお守り。絶対この事を書こうとしてたのに、なぜか忘れてた。
このお守りの事まで忘れてしまったら、多分おしまいだと思う。
次は放してくれないと思う。