怖話短編集

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恐怖の心霊体験談

テープ起こしのアルバイトをしたときのこと

大学生のころ、学校から出るアルバイトでテープ起こしをしていました。学生間で行った授業内での議論のテープ起こしが主で、先生や職員の会議などではありません。それでも一応、守秘義務のある仕事でした。

その年、私は夏季長期休暇中の特別授業のテープ起こしを担当することになりました。全部で五回の短期集中授業です。

テープ起こしのアルバイトをしたときのことの画像

テープ起こしのやり方もずいぶんと慣れていて、いつもレコーダーを渡してくれる職員さんとも顔見知りです。その職員さんからさっそくレコーダーを受け取り、家で作業を始めたときのことでした。

ほとんどの場合、録音は小会議室や小教室など静かな場所を借りて行われます。それにちょうど夏休み中ですから、学内はいつもより静かなはずでした。しかし、イヤホンをつけて再生し始めると、議論を交わす生徒たちのうしろの方がなんだかざわざわとしています。最初は大教室の片隅でやったのかと思いました。教室を取り忘れて、他にも同じように議論している生徒がいる中で録音になってしまったんだろう、と。

別に違反ではないのでかまわないのですが、テープ起こしはかなり耳の神経を使います。次はちゃんとしてほしいと思いながら、その日は作業を終えました。
仕事を納品した翌週、新しい録音をもらってまた作業を始めましたが、やっぱりうしろでざわざわと耳障りな音がしました。それも、心なしか前回より大きくなっているような気がします。

夏休み中も申請すればちゃんと教室や会議室の貸し出しはしていますから、もうそういう手間を惜しんでいるとしか思えず私はイライラしました。雑音に気を取られながらのテープ起こしは異常に疲れました。ざわざわする声がなにか意味のある言葉を言っているようにも聞こえて、それが議論の声を拾う邪魔になるのです。
誰かに愚痴ってしまいたかったのですが、一応とはいえ守秘義務があるのでそれも叶いません。それに、このテープの生徒たちとも面識はありませんでした。せめて顔見知りの職員さんから何か言ってもらえないだろうか、と納品する際に職員さんに訴えることにしました。職員さんは快く承諾してくださったので、安心して次週の仕事も請け負ったのです。

ところが、その日受け取った録音もざわざわ声は取れていませんでした。それどころか、もっとうるさくなっていたのです。生徒の声に被せるように、その後ろの声が何かささやいてきます。

最初のうちは何を言っているかまでは判別できませんでした。私もなるべくその声を意識しないよう努めていたのですが、いつもより早く集中が切れてしまい、無意識のうちにうしろの声まで拾おうと耳をすませてしまったのです。

最初のうちは何を言っているかの画像

「ぼ……ぼ……ぼぼ……お」
そう囁く声は、ノイズではなく、明らかに男性の肉声でした。そう認識した瞬間、ざっと鳥肌が立ちました。なんだか聞いてはいけないものを聞いてしまったような気味の悪さにゾッとして、私はイヤホンを投げ捨てるように外しました。

イヤホンはもう外したのに、その声が私の耳元でささやいてくるような奇妙な生温かさが耳の当たりに漂っているようで。私は我慢できずに家を飛び出して大学まで行くとそのレコーダーを職員さんに返しました。
仕事を途中で投げ出すのは悪いことだというのはわかっています。それでも、これ以上この録音を聞くことはできませんでした。

半泣きでレコーダーをつき返す私に職員さんも同情してくれたのだと思います。そのテープ起こしの仕事はそこで終了ということにしてくれました。
レコーダーを返したとはいえ、しばらくはあの声が耳から離れませんでした。それで一人暮らしの家にいられなくなった私はすぐに実家へ逃げ帰ったので知らなかったのですが、夏休みが明けてから職員さんにあの授業のテープ起こしはどうなったのか聞いたところ、私がレコーダーをつき返したすぐあとで、授業を担当していた臨時講師が突然辞めてしまい一時中止状態に陥ってしまったそうです。

幸い、すぐに新しい講師を雇い直してなんとかなったそうですが、その後の録音は、いえ、その前から、ちゃんと小教室を取って録音されていたらしいのです。

私が聞いた、あの気味の悪い男の人の声は結局なんだったのかわかりません。生徒のいたずらだったのかもしれませんが、私にはそうは思えないのです。

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