地元には霊感のある人が通ると「ちょっと気持ち悪いなあ…」と思う道がありました。その道を通ると、後ろから抱きつかれているような、そんな感覚がするのです。運転していると後ろから腕に手を回されているような…。
知人の男性は「あそこには女の霊がいる。後ろから手を回す感じがねちっこくて女っぽい。」と言っていました。
しかしお母さんには「あそこの霊は男だ。」と言われていました。わたしは性別までは感じ取れなかったので、「人によって感じ方が違うか、霊がふたりいるのかなー」と思っていました。ただ「気持ち悪いなあ」という感覚はあったので、その道を極力通らないようにしていました。
ある日、お母さんの運転でわたしとお母さんの友達と出掛けていました。その時に「気持ち悪い道があるんだ。何故か男の霊だと感じる人と女の霊だと感じる人がいる。不思議だよね。ふたりいるのかなー?」と話をしました。
するとお母さんの友達はすごく興味を持って「その道通ってみたい!帰りに通って!」と頼んできました。そのお母さんの友達は霊感がなく、心霊現象にもあったことがないそうで、でも心霊現象や心霊現象スポットに興味があるから行ってみたいとのことでした。
わたしもお母さんも霊感があるので「わざわざ気持ち悪い道をとおりたくない。」と言ったのですが
「わたしは運転免許持ってないから自力では来れない!お願い!連れてって!」としつこく言われました。わたしは本当に嫌だったけれど、お母さんが「そこまで言うなら仕方ないなあ…あんまりゆっくりは通らないからね?止まったりしないからね?」と承諾してしまいました。
3人で買い物を終えた帰り道、「ねえ、お母さん、本当にあそこの道を通るの?わたし気持ち悪いから通りたくないよ…。」と訴えましたが「少し通るだけだから我慢して。」も聞き入れてもらえず、車を降りるわけにもいかないので黙って乗っていました。
そしてその道を通った時わたしはぞっとしました。身体が少し硬直して、後ろからふわっと誰かに抱きつかれたのです。その道を通っている時、わたしは声が出ませんでした。通り過ぎて「何もなかったねー。」と残念がるお母さんの友達。
「わたしもあまり感じなかったなー。」と言うお母さん。
自分は抱きつかれたことを言うか迷ったけれど、お母さんの友達にあれこれ聞かれるのも嫌だったし、戻ろうなんて言われてしまったらたまったもんじゃなかったので黙っていました。
その日の夜です。わたしは金縛りにあいました。動けずにいましたが、明らかに誰かがいます。感じるのです。恐る恐る人の気配がする方を目だけを動かして見てみると、赤いワンピースを着た女が立っていました。細くて、青白くて長い黒髪。
わたしは「わたしには何も出来ません。わたしは何もしてあげられません。お願いですから帰ってください。」と心の中で唱え、気絶しました。気付くと朝で、その後その女がわたしの部屋に現れることはありませんでしたが、あの道にいる霊は女ということはわかりました。