エレベーターに取り憑いたカメラを構える不審な男との恐怖体験談

恐怖の心霊体験談

これはわたしが小学4年生のときに体験した話です。当時わたしが仲良くしていた友人のSちゃんが住むマンションには、おかしな人がいました。いつもマスクをつけ、マンションの端っこの廊下から子供たちをジロジロ見てはカメラを構えるという明らかに不審な男が。

わたしはよくSちゃんのマンションに遊びに行っていたので、この男を何度も見かけたことがあります。

しかもその男は決まって、わたしがSちゃんの住む4階から下へ降りるエレベーターへ向かう途中にカメラを構えるのです。

正直かなり気持ち悪かったので絶対に顔を向けないようにしていたし、Sちゃんのお母さんにも伝えました。ですがSちゃんのお母さんは、そんな人は見たことがないと取り合ってくれませんでした。Sちゃんはこの男をよく見かけると言っていたのですが。
そんな状況が一年近く続いたある日、珍しく同じクラスのMちゃんと一緒にSちゃんのマンションへ遊びに行き、帰ろうと2人でエレベーターに向かっていました。

するといつも通りあのおかしな男が視界に入ったので、顔を向けまいと平静を装っていたのですが、その事に気を取られ、Mちゃんにこの男のことを話すのをすっかり忘れていました。

Mちゃんが視線を感じて振り返ったとき、マスクをつけたあの男とバッチリ目が合い、次の瞬間シャッターを切られてしまったようなのです。
Mちゃんは、ひっ、と小さな悲鳴をあげてわたしにしがみつき、そのまま2人足早にエレベーターに乗り込み、マンションを後にしました。
次の日学校でMちゃんに会い、話をしました。どうやらその晩気持ちの悪い夢を見たそうなのです。

自分の住むマンションのエレベーターに乗り下へ降りようとすると、どの階にもSちゃんのマンションで目が合ったあの男がカメラを構えて立っている、というものだったそうで、かなり顔色が暗くなっていました。

次の日からMちゃんは学校に来なくなりました。

噂によるとMちゃんとお母さんは体を悪くし、お父さんはリストラに遭い、家族全員に不幸なことがあってどこか遠くへ行ったそうですが、本当のところはわかりません。
わたしはMちゃんのことをSちゃんに伝えようと、再び彼女のマンションを訪れました。その帰り、やはりいつも通りあの男はカメラを構えていて、心底気持ち悪かったのですが、なんだかわたしはあの男に対して怒りを覚えていました。Mちゃんが遠くへ行ってしまった原因が、あいつにあるような気がしてならなかったのです。

わたしは気持ちを抑えられず、とうとうあの男のことを睨みつけてしまいました。すると男はカメラを目元から離し、わたしと目を合わせ、なんとも言えない気持ちの悪い歪んだ目で微笑んで、またカメラを構え、シャッターを切りました。

背筋に寒気が走り、わたしは慌てて近くの階段をかけおりました。
エレベーターはなんだか、使ってはいけない気がしました。

それからというもの、わたしは自分の住むマンションでも外の施設でも、エレベーターを使っていません。

その男とカメラ、エレベーターの繋がりは未だにまったくわからないままです。でも、たぶん次わたしがエレベーターを使ったときは、Mちゃんたち家族と同じ道を辿るのだろうと思います。
果たして彼は、人間だったのでしょうか。