祖父の葬儀当日。
青森県在住。Yさんの体験談。
ばたばたと準備をしていたわたしが見たのは、死んだはずの祖父の姿でした。しかも、そのことを親戚たちに話すと、なんと他にも複数の目撃者がいることが判明したのです。なにを伝えたかったのかは未だに不明です。
それは今から20年ほど前の出来事です。病に倒れて寝たきりだった祖父の訃報を受け、わたしたちは祖父の家に行き、葬儀の準備をしていました。古くて大きな家で、葬儀は自宅で行なわれることもあり、朝から晩まで大勢が訪れていました。
葬儀当日のことです。誰もいないはずの部屋に向かう姿に見覚えがありました。祖父の歩きかたです。あれ?と思い行ってみると誰もいませんでした。
みんながいる部屋に戻り、いま見たものの話をすると、何人かのいとこたちが、「実は自分も見た」「さっきすれちがった」というような話をしだしたのです。
実は祖父自体が「視える」タイプの人間でした。あまり話したがりませんでしたが、若い頃は苦労したようです。まあ、視える人だったしね」と話してその場は終わりました。祖父を見かけたのは、今まで一度も幽霊を見たことのない人間ばかりでした。
それきり、祖父は現れませんでした。なにか伝えたいことがあったかもしれませんが、今となっては分かりません。
ただひとつ困ったのは、わたしの妹が、それ以降「視える」ようになってしまったこと。たびたび、おそろしい目に遭っているようですが、祖父と同じで話してはくれません。もし、それが妹ではなくわたしだったらと考えると、今でもかなり、怖いと感じています。