独身時代を過ごしたアパートにおいて、同期入社の仲間であるK君が宴会終了後の深夜に自分の部屋である3階の302号室から真下の施錠されている2階の202号室に侵入していたことを、翌日朝に202号室のA君から聞いた話。
今からもう30年も前に経験した不思議な出来事です
当時私はある会社の独身アパートに住んでいました。そこには同期入社の15人が3人ずつ5つの部屋に住んでいました。
私は3階の301号室、その他のメンバーも2階から3階にかけて各々の部屋に住んでおりました。
同期入社で同じアパートに暮らしていると仕事のことはもちろん、スポーツやバーベキューなどいろんなレクリエーション、恋愛の相談などを通して固い友情と団結力が育まれます。
そして毎日のように仕事を終えた仲間たちでこのアパートのある部屋を会場として、しばしば宴会が開催されていました。そんな楽しい思い出に包まれた懐かしの独身寮生活のなかで、ひとつだけ不思議な体験がありました。
古い記憶なので正確さに欠ける記述であることをお断りしたうえで、お話してみたいと思います。
その日もいつものように、会社を早く引き揚げてきた連中たちで宴会を開催しておりました。
ひととおり酒が進み、夜も更けてきてお開きということで各メンバーはそれぞれの部屋に引き揚げて行きました。不思議な体験というのはその日の夜に起きました。
この日の宴会メンバーは、301号室、302号室、202号室の3つの部屋に住む6人が301号の私の部屋で飲んだのですが、お開きとともにみんな各々の部屋にもどり眠りについた(はず)でした。
そこへ宴会に参加できなかったA君が夜勤を終えて会社から戻り
202号室の彼の部屋のカギをあけて中に入った瞬間に、先ほどまで我々と飲んでいて302号室に戻ったはずのK君が幽霊のようにボーっとした表情で立っていたというのです。
驚いたA君は思わず「ここでなにしてるんじゃ!」と叫んだそうです。これに対してK君は「ないんだよ~。ないんだよ~。」とわけのわからない言葉を繰り返すばかり。
恐怖に駆られたA君が再び「なにしてるんじゃ!」と叫んだとき、K君は無言で部屋から出て行ったそうです。
次の日の朝、もちろんK君のいないところでA君からこのことを聞いた我々一同は、一様に恐怖のような不思議な気分に包まれました。
k君がカギのかかっている202号室に入るためには酔っぱらったまま302号室からベランダ伝いに降りて窓から侵入するしかないと思われるのですが、酔っぱらった状態でしかも雨どいしかない場所から降りることはどうしても不可能なように思われます。
もちろん誰もK君に確認することはできませんし、したところで何も覚えてはいないでしょう。
今でも同期で飲み会を定期的に開催していますが、いまだにだれも目の前にいるk君にこの時のことを話題にすることもなく彼を含めたメンバーで楽しく飲んでいます。