霊感など全くない私がイギリスにホームステイした際に体験した不思議な話です。具体的に何かが見えたわけではないのですが、かすかにいるような感じがする、ではなくはっきりそこに人がいる!と感じることがありました。しかし、そこには人はいないのです。
今から20年ほど前に私が高校生だったころ
イギリスに三週間のホームステイをする機会がありました。
季節は夏、日本に比べれば少々寒い日も多かったですが気候も良く、温かいホストファミリーにも恵まれ、順調に日々を過ごしていました。
同じ高校から来たもう一人の学生とペアで一つの家に滞在していた私たち。二人で一つの部屋を与えられ、専用のバスルームが一つ。
日本に比べると部屋もバスルームも大きく、快適でした。
ホストファミリーと過ごす以外にも、現地では学校に通ったり課外活動に参加したりと、何かと忙しい日々を送っていた私は、だんだん疲れやすくなってしまい、一日が終わるころには先にバスルームを使わせてもらい、早々にベッドに入ることが多くなっていたように思います。
その日もバスルームに先に入らせてもらい、明日の学校の準備を終え、ベッドに入ると早々に眠くなってしまいました。
もう一人の友人がバスルームでシャワーを使う音が聞こえていました。今日はやけに響く感じがするな、と思いながら部屋の中央側ではなく壁側のほうに体を向けて寝ていました。
そうしてどのくらい時間がたったのかわかりません。目は相変わらず閉じたままでしたが、誰かにとんでもない至近距離からみられている感じがするのです。
鼻先に顔をつきつけられている、としか言いようのない距離です。
私は咄嗟にバスルームから出てきた友人がふざけている
と考えました。しかしバスルームから相変わらず水音が聞こえてきます。
急に不思議な感じがしました。私の目の前にいる人は誰なのだろう。
思い切って目を開けてみました。やはりそこには誰もいません。しかし、確かに「人」がいるのです。濃厚にその気配がするのです。ふれれば確かな手触りを感じるのではないかと思うほどに。
混乱しましたが、不思議なことに全く恐怖は感じませんでした。
どうやらその「人」は壁際に体を向けて寝ている私に、反対側から覆いかぶさるようにして顔を覗き込んでいるらしいということが気配で分かりましたが、恐怖も圧迫感も感じませんでした。
頭がやけに冷静で、この「人」は日本からのお客の顔を見に来たのかな・・・などと、ぼんやり考えていたことを覚えています。
しばらくたつとその「人」の気配も消えました。やがて友人も戻ってきました。
一度、バスルームから部屋に戻ってきた?と友人に聞きましたが、そんなことしていない、と友人が答えたのは言うまでもありません。
その「人」を感じたのはその一度きりでした。全く怖い感じも嫌な感じもしなかったので、お客を珍しがる好奇心いっぱいのいい「人」だったのだと思います。