恐怖、初めて見た女性に取り付く幽霊。自分だけにしか見えない、その幽霊と視線が合ってしまった。霊とはこの様なものだろうか、足がある、向こうが透けて見えるのだ、青白く。自分には霊感は無いハズなのに。私は金縛りに合ったかようにその場から立ち去ることも出来なかった。
今を遡る事ん十年前。その日も今年の様に猛暑が続いていた
そんなある日の出来事でした。私は街に買い物があって中心街へと出かけていたのです。
私は一般的に言われるような霊感は無く、その類にはあまり関心はありませんでした。方々回ってようやく用事を済ませた私は暑さも手伝ってか少々疲れていたのです。
とあるショップの前でとうとうへばってしまい、店先の影で一休みしていました。そこは地元でも有名なある坂道だったのです。その坂で転ぶと何年か後に命を落とすという言われがありました。
そんな事も気にせず暑苦しい空を眺めながら休息を取っていた私は、ふと坂の下から登ってくる女性に気が付きました。
白いシャツに黒のパンツで小さいお子さんを連れている様に見えたのですが、どうも見え方が変な事に気付きました。どこが変なのか聞きたいですか。
本当に?では厄払いのつもりでお話しましょう。その女性は子供を抱えていたのです、腰の所に。しかもこの上り坂を。そんな状態で登ってこれる訳がありません。
妙に体力のある人だなぁと不思議に思って見ていたのですが、段々と近づいてくるにつれその尋常では無い様に驚きました。子供は抱えられてというよりは、自分から女性に後ろから抱きついていました。
子供の力でしがみ付ける訳がありません
これは一体どういう事なのか。そうこうしているうちに二人?は私のすぐ前までやって来ていました。
女性にしがみ付いている子供は坊主頭で、幼稚園児が遊ぶ時の服を着ています。足はブラブラさせていました、そして青白く透けているのです。これが霊というものでしょうか。
しかも、その子供と目が合ってしまいました。私はその場から金縛りに合ったように動けませんでした。幸いその子供は私には興味が無かったようです。
ですが女性は一向に気付いている様子はありません、怪訝そうな目で私を見て行ったのです。可笑しな事に、その女性も周りに居た人達も騒ぐ様子がありません。
あんなにハッキリ見えているのにです。もしかして私にだけ見えたのかもしれません、霊感はないのですが。
私はあまりの暑さと疲労で幻覚でも見たのではないかと思い、その女性が去った方向をもう一度見ることにしました。居ました、やっぱり。
足をブラブラさせた子供がどうしても見えてしまいます。ですが、私にはどうする事も出来なかったのです。
今でもその坂は避けて通る事にしているのですが、夏になるとあの日の出来事が今でも思い出されるのです。