私は姉や母から、幽霊は人間と違うように見えるものだ、幽霊が現れる場はとても寒い、幽霊が出る夜はなんとなく胸騒ぎがしたり、悲しくなる、さみしくなるものだと聞かされて育ちました。でも・・・実際に私が見た時は、リアルな人間に見えました。
私が高校生三年生の冬の夜の不思議な体験をお伝えします。私はいつも自分の部屋で勉強しているのですが、その日はとても寒くて居間でストーブに当たりながら勉強していました。家族が寝静まった時間、居間のドアの向こうに父が立っているのが見えました。
ドアの一部に模様入りのガラスがはめこまれていたので、人が立つとシルエットが見えるようになっていました。父は部屋に入ろうともせずに、ドアの向こうに立ったまま。私は勉強の集中が途切れしてしまい、イライラし始めました。父は私を心配しているのだと思いつつも、じーと見られていては勉強に身が入りません。
私は思わず「勉強しているの!邪魔しないで!」と父に向って叫びました。父は、その声でドアから離れていきました。私の頭の中は怒りモードで、まったくもう、お父さんたら、うるさいんだから!いいかんげにして欲しい!腹立つ、ブツブツ、ブツブツ。当時、父は二階の部屋に寝ていました。
私はイライラしながらも勉強に戻り、父が階段を上ったことを意識することもなく、その日の目標ページまでペンを走らせていました。翌朝、父に「私、勉強しているんだから、見に来なくてもいいよ」と伝えました。父は、一瞬戸惑った顔をしたように見えましたが「ああ」とだけ言い、私はいつものように登校しました。
その日、帰宅すると父の友人が亡くなったこと、そして、昨夜は父は居間のドアに立つことなく寝ていたことを聞かされました。そして、父は「○○(←亡くなった方の名前)は、お前に怒鳴られて部屋にも入れず帰って行ったんだな」と大きな声で笑っていました。
私は前の日の夜、ドアの向こうに立っていたのは、間違いなく人間であり、父だと確信していたので本当にビックリしました。それから、私は父や母に、お前の武勇伝は幽霊を怒鳴って追い出したことだと笑われ、ご近所さんにもその話は広まり、とても恥ずかしい思い出になりました。