中学生の頃のある夏の日、私は初めてそこにいるはずのない何かを感じました。自分の部屋でいつも通り眠りについた私は重みと共に目を覚ましました。私の上には何かが確実に乗っていたのです。初めての金縛りと初めての恐怖感、私は今でもその感覚を忘れることができません。
とても暑い日が続いていた夏のある日、高校受験を控えた中学三年生の私はたまには少し受験勉強をしてみるかなあと、珍しく遅くまで机に向かっていました。
自分でも不思議なのですがその日はとても集中することができ気づいたら深夜の1時を回っていました。不思議というのも普段の私は勉強を始めてもすぐ周りに気を取られ1時間も集中できないタイプだったからです。
「うわ、もうこんな時間!?お母さんも声もかけずに寝ちゃったのかなーお風呂入らなきゃ」と1階に降りてお風呂に入りました。
リビングからはテレビの音だけ聞こえていたので「お父さんまたテレビつけっぱなしで寝てる」と思いながらも確認もせずさっさと自分の部屋に戻り布団に入りました。なんだかんだで2時を過ぎていたのですが夜ふかし癖のある私はあまり気にしていませんでした。
いつもならメールチェックをしたり携帯をいじってから、眠りにつく私なのですがその日はとても眠くて眠くて布団に入るなり本当にすぐ寝てしまいました。
どれくらい寝たのかは分りませんが、体に重みを感じて私はふと目を覚ましました。目を覚ましたといっても目は開けませんでした。
起きるのと同時に感じたただならぬ気配、、恐怖心が勝って開けられなかったのです。体は動かず声も出ず、感じるのは腹部への重みと顔のすぐ前の気配。そう私の上には確実に何かが、誰かが乗っていたのです。
そしてすぐ目の前にはあったのです。女性の顔が。なぜ顔だと分かったか、聞こえたからです。「ふーっふーっ」という声にならないような声を。顔に息を吹きかけられているような風と共に。
「夢だ夢だ夢だ」と心の中で叫んでるうちに気付いた時には朝でした。あれは夢だったのか現実だったのか証拠はありませんが、あの感覚は夢なんかではなかったと私の体ははっきりと覚えています。それ以来うちの愛犬は私の部屋では寝てくれなくなったのも何か関係があるのかもしれません。