母から伝聞した最初は怖かった「勇二おっちゃん」の不思議な体験談

不思議な体験談

親戚の勇二おっちゃんが亡くなった。

島根県在住。Mさんの体験談。

母は法要に行って、その家族から不思議な話を聞く。おっちゃんは死んでも家に救急車を呼び、家族だけではおさまらず兄弟の家をも転々とする。トミ子おばちゃんの家、マサエおばちゃんの家、勇二おっちゃんは何をしたかったのだろう。

穏やかな昼下がり、掃除を終えてテレビを観ていると電話が鳴った。母からだった。「奈美?勇二おっちゃんが亡くなったわ」

半年前ぐらいから入院していて、闘病生活を送っていると聞いていた。亡くなった祖母の弟で、昔は時々交流があったので、よく覚えていた。

「お葬式はお母さんとお父さんが出るから奈美は出なくていいよ。あまり人を呼べないみたいやわ、なんか事情があるんやろうね」

私は母に宜しくお願いしますと頼み電話を終えた。
数日後、昼間のんびりテレビを観ていると電話が鳴った。このパターンはやはり母からだった。

「奈美、勇二おっちゃんのお葬式、昨日無事に終ったからね。なんか色々大変みたいやったよ。いうても、あんな若い息子さん二人だけになったから。息子さんもほっとしてると思うけど。お葬式なんて初めての経験やしね、なんか慌ててはって可愛そうやった。またこれから暫く法事が続くからお父さんと二人で行ってくるわ」

ご苦労様でした、お母さんありがとう、と話して、私はこの日の電話を終えました。
それからまた数日後、母からの電話が鳴った。

「奈美、勇二おっちゃんの法事から今帰ってきたんやけどね。息子さんが変なこと言うてたんよ。なんか昨日の夜中に家に救急車が来たんやて。ウー!て家の前で音が止んで、チャイムも鳴ってバンバン玄関の戸を叩かれて、息子さん二人で慌てて玄関開けたんやて。

そしたら救急隊員の人が立ってて「到着しました」て言うんやて。「え?呼んでないですけど」て言うたら「おかしいな、先ほどこちらのお宅から電話があったんです」と通報があった時間と着信履歴を見せられて、ほんまにここからなんやて。

「確かにこの家ですよね。西村勇二さん、68歳、背中が痛む、すぐ来てくれと言われました、どこにおられますか?」て言わはるんやて。「あの、父は亡くなりました」て息子さんたちが話したら「そうだったんですか、半年ぐらい前にもよく通報ありましたよね、ここから」て。

確かに半年前に入院するまで家から救急車を何回か呼んでたんやて。そんなん聞いたから怖くなってさ、そんな話もあるんやね。息子さんたちも驚いてたわ。」

えー、怖いし!ほんまにか?と私は迷惑気に言った。母は話すだけ話してスッキリして電話を終えた。
数日後、また母から電話があった。

「奈美!さっきな、トミ子のおばちゃんから電話あって、昨日の晩に勇二おっちゃんが家に来たんやて。なんか居間でテレビ見てたら庭から声がしてきて、よく聞こえるようにテレビ消したんやて。

そしたら「トミ子、トミ子」て勇二おっちゃんの声がするんやて、庭から。それでトミ子おばちゃんが縁側まで行ったら窓が開いててな、見たけど誰もいないんやて。そしたらまた「トミ子、トミ子」て呼ぶんやて。

「勇二か?」てトミ子おばちゃんが聞いたら「そうよ、寂しいからお前のとこに来たんよ」て言うたんやて。「お前、死んでるんやぞ」て言うて縁側の窓を閉めたんやて。そう言うてトミ子おばちゃんから電話かかってきてな、怖くてな」と母は言った。なんやろね、と私たちは話して電話を切った。

数日後、また母からの電話だった。

「奈美、さっきな、マサエおばちゃんがウチに来てさ。買い物のついでに寄らはったんやけど、なんか家にいたら勇二おっちゃんの声がするんやて。「マサエ、マサエ」て呼ぶ声がするんやて。怖くて家中の窓を閉めてるらしいよ。こんだけ聞いたら、お母さんも怖いわ、卒倒するわ。やっぱ寂しくて仲良しやった兄弟のところに行かはるんやわ」と。

私が母から聞いた不思議な話を、久しぶりに帰省してきた妹に話した。

「オウ!死んでからもアクティブ」

ゆとり世代の妹らしい感想だった。