東名自動車道を車と並走する老婆の悲惨な末路

笑える心霊体験談

数年前、私は家族で山梨の昇仙峡に日帰り旅行へと出かけました。
昇仙峡は紅葉の名所であり、紅葉狩りも兼ねてウォーキングコースコースを散歩する為です。

朝早く出たため、中央自動車道がガラガラで、予定の時間よりも早く着いてしまいました。

ウォーキングコースで紅葉狩りを済ませ、名水で打たれた蕎麦を食べ、名産の水晶を見て回る観光を終える頃には、すっかり夕方でした。
行楽シーズンの中央自動車道は、事故などで物凄く混むことがあります。
急いで私達は帰路に着いたのですが、昇仙峡の最寄りの甲府昭和インターに入った瞬間に、事故渋滞に巻き込まれてしまいました。

車は全く進まず、二時間ほどしてのろのろと動いた後に釈迦堂パーキングエリアの看板が見えてきたので、しばらく時間を潰そうという話になったのです。
運転していた父親は仮眠を取り、夜の22時頃に渋滞の緩和も見てから再出発。

その日は土曜日だった為か、渋滞は緩和されており、ほとんど中央自動車道を走る車はありませんでした。
そうして出発してしばらくすると、心地よい車の振動と、昼間の紅葉狩りの疲労からか、うとうとと船をこぎ始めた、その時です。

突然、音が全く聞こえなくなり、体が動かなくなったのです。
時たま金縛りに合う事はありましたが、車の中での金縛りは初体験で、気持ち悪いなーと思っていると、車の窓の外から気配を感じました。

気になったので、その方向に首を動かそうとしてみると、油の切れたネジの様にゆっくりと、力を入れて窓の外に向けた瞬間、そこには異様な光景が。
外には白い着物を着た、老婆が居たのです。

時速80キロの車の横にです、更にその老婆は四つん這いになり、まるで犬の様にアスファルトを両手両足で軽快に駆けていました。

今思い返してみれば、都市伝説に『ターボばあちゃん』なんていうものがありました。
この老婆がターボばあちゃんなのかどうかはわかりませんが、少なくともただ者ではありません。
いいえ、恐らくは『もののけ』か『バケモノ』です。
人間こういった現実離れをした光景を見ると、恐怖よりも先に驚愕の方が先に来ます。
私がこの老婆を見た時、頭の中で思ったのは『漫☆画太郎の漫画みたい!』でした。

さて、その掟破りの地元走りで疾走する、四足歩行のターボばあちゃんは、こちらの視線に気付いたのか首だけこちらに向けると、私に向かって笑いました。
その笑い方は四つん這いで走っているとは思えない程、爽やかで、思わず笑顔でサムズアップを返したくなる程でした。

しかし、どの世界にも脇見運転というのは危険な行為です…こと、時速80キロで走行中ならば余計に、更に外の老婆は素手で素足なのです。
道路と道路を繋ぐジョイントに足を引っかけたのか、それとも足がもつれたのかはわかりませんが、一瞬だけ老婆は、驚愕の表情を浮かべたのです。
その直後、老婆の姿は左から右へと消えており、それと同時に私は金縛りから解放されました。

流石に車の中でその話をするのもあれなので、帰ってから両親にその事を話すと『夢でも見てたんじゃないの?』と笑われました。
でも、私の頭の中には、老体とは思えない程の爽やかな笑顔と、一瞬だけ浮かべた驚愕の表情が離れず、あれが夢の産物だとは思えないのです。
あの老婆が両親の言う通り、私の想像上の産物だったのか、それとも高速道路に潜む怪異だったのかはわかりません。
しかし老婆は、運転に慣れてきた頃に忘れがちな教訓を、確かに思い出させてくれたのです。

『スピードの出し過ぎには気を付けましょう』
『わき見運転はしないようにしましょう』
皆様も夜間の高速道路での、長時間の運転には注意してくださいね。