洒落怖の名作「姦姦蛇螺-かんかんだら」を紹介。田舎町の住む中学生が、ある日地元で禁足地と呼ばれる場所に立ち入ったお話です。洒落怖の名作として有名な話で、八尺様と並ぶ愛されキャラとして姦姦蛇螺も萌キャラ化されています。姦姦蛇螺のスレにコメントされた「測量のバイトをしていた」も併せて恐怖の洒落怖体験談を猫と犬で語ります。
洒落怖の名作「姦姦蛇螺-かんかんだら」
小中学の頃は田舎もんで世間知らずで、
特に仲の良かったA、Bと三人で毎日バカやって、荒れた生活してたんだわ。
オレとAは家族にもまるっきり見放されてたんだが、Bはお母さんだけは必ず構ってくれてた。
あくまで厳しい態度でだけど、何だかんだ言ってBのためにいろいろと動いてくれてた。
そのB母子が中三のある時、かなりキツい喧嘩になった。
内容は言わなかったが、精神的にお母さんを痛め付けたらしい。
お母さんをズタボロに傷つけてたら、親父が帰ってきた。
一目で状況を察した親父は、Bを無視して黙ったまんまお母さんに近づいていった。
服とか髪とかボロボロなうえに、死んだ魚みたいな目で床を茫然と見つめてるお母さんを見て、親父はBに話した。
B父「お前、ここまで人を踏み躙れるような人間になっちまったんだな。
母さんがどれだけお前を想ってるか、なんでわからないんだ」
親父はBを見ず、お母さんを抱き締めながら話してたそうだ。
B「うるせえよ。てめえは殺してやろうか?あ?」
Bは全く話を聞く気がなかった。
だが親父は何ら反応する様子もなく、淡々と話を続けたらしい。
B父「お前、自分には怖いものなんか何もないと、そう思ってるのか」
B「ねえな。あるなら見せてもらいてえもんだぜ」
親父は少し黙った後、話した。
B父「お前はオレの息子だ。母さんがお前をどれだけ心配してるかもよくわかってる。
だがな、お前が母さんに対してこうやって踏み躙る事しか出来ないなら、オレにも考えがある。
これは父としてでなく、一人の人間、他人として話す。
先にはっきり言っておくが、オレがこれを話すのは、お前が死んでも構わんと覚悟した証拠だ。
それでいいなら聞け」
その言葉に何か凄まじい気迫みたいなものを感じたらしいが、「いいから話してみろ!」と煽った。
B父「森の中で、立入禁止になってる場所知ってるよな。あそこに入って奥へ進んでみろ。後は行けばわかる。
そこで今みたいに暴れてみろよ。出来るもんならな」
親父が言う森ってのは、オレ達が住んでるとこに小規模の山があって、そのふもとにある場所。
樹海みたいなもんかな。
山自体は普通に入れるし、森全体も普通なんだが、中に入ってくと途中で立入禁止になってる区域がある。
言ってみれば、四角の中に小さい円を書いて、その円の中は入るなってのと同じで、きわめて部分的。
二メートル近い高さの柵で囲まれ、柵には太い綱と有刺鉄線、
柵全体にはが連なった白い紙がからまってて(独自の紙垂みたいな)、大小いろんな鈴が無数についてる。
変に部分的なせいで、柵自体の並びも歪だし、とにかく尋常じゃないの一言に尽きる。
あと、特定の日に、巫女さんが入り口に数人集まってるのを見かけるんだが、
その日は付近一帯が立入禁止になるため、何してんのかは謎だった。
いろんな噂が飛び交ってたが、カルト教団の洗脳施設がある…ってのが一番広まってた噂。
そもそも、その地点まで行くのが面倒だから、その奥まで行ったって話はほとんどなかったな。
親父はBの返事を待たずに、お母さんを連れて2階に上がってった。
Bはそのまま家を出て、待ち合わせてたオレとAと合流。そこでオレ達も話を聞いた。
A「父親がそこまで言うなんて相当だな」
オレ「噂じゃカルト教団のアジトだっけ。捕まって洗脳されちまえって事かね。
怖いっちゃ怖いが…どうすんだ?行くのか?」
B「行くに決まってんだろ。どうせ親父のハッタリだ」
面白半分でオレとAもついていき、三人でそこへ向かう事になった。
あれこれ道具を用意して、時間は夜中の一時過ぎぐらいだったかな。
意気揚揚と現場に到着し、持ってきた懐中電灯で前を照らしながら森へ入っていった。
軽装でも進んで行けるような道だし、オレ達はいつも地下足袋だったんで歩きやすかったが、
問題の地点へは四十分近くは歩かないといけない。
ところが、入って五分もしないうちにおかしな事になった。
オレ達が入って歩きだしたのとほぼ同じタイミングで、何か音が遠くから聞こえ始めた。
夜の静けさがやたらとその音を強調させる。最初に気付いたのはBだった。
B「おい、何か聞こえねぇか?」
Bの言葉で耳をすませてみると、確かに聞こえた。
落ち葉を引きずるカサカサ…という音と、枝がパキッ…パキッ…と折れる音。
それが遠くの方から微かに聞こえてきている。
遠くから微かに…というせいもあって、さほど恐怖は感じなかった。
人って考える前に、動物ぐらいいるだろ。そんな思いもあり、構わず進んでいった。
動物だと考えてから気にしなくなったが、そのまま二十分ぐらい進んできたところでまたBが何か気付き、
オレとAの足を止めた。
B「A、お前だけちょっと歩いてみてくれ」
A「?…何でだよ」
B「いいから早く」
Aが不思議そうに一人で前へ歩いていき、またこっちへ戻ってくる。
それを見て、Bは考え込むような表情になった。
A「おい、何なんだよ?」
オレ「説明しろ!」
オレ達がそう言うと、Bは「静かにしてよ~く聞いててみ」と、
Aにさせたように一人で前へ歩いていき、またこっちに戻ってきた。
二、三度繰り返して、ようやくオレ達も気付いた。
遠くから微かに聞こえてきている音は、オレ達の動きに合わせていた。
オレ達が歩きだせばその音も歩きだし、オレ達が立ち止まると音も止まる。
まるでこっちの様子がわかっているようだった。
何かひんやりした空気を感じずにはいられなかった。
周囲にオレ達が持つ以外の光はない。月は出てるが、木々に遮られほとんど意味はなかった。
懐中電灯つけてんだから、こっちの位置がわかるのは不思議じゃない…
だが、一緒に歩いてるオレ達でさえ、互いの姿を確認するのに目を凝らさなきゃいけない暗さだ。
そんな暗闇で、光もなしに何してる?
なぜオレ達と同じように動いてんだ?
B「ふざけんなよ。誰かオレ達を尾けてやがんのか?」
A「近づかれてる気配はないよな。向こうはさっきからずっと同じぐらいの位置だし」
Aが言うように、森に入ってからここまでの二十分ほど、オレ達とその音との距離は一向に変わってなかった。
近づいてくるわけでも遠ざかるわけでもない。終始同じ距離を保ったままだった。
オレ「監視されてんのかな?」
A「そんな感じだよな…カルト教団とかなら、何か変な装置とか持ってそうだしよ」
音から察すると、複数ではなく、一人がずっとオレ達にくっついてるような感じだった。
しばらく足を止めて考え、下手に正体を探ろうとするのは危険と判断し、
一応あたりを警戒しつつ、そのまま先へ進む事にした。
それからずっと音に付きまとわれながら進んでたが、やっと柵が見えてくると、音なんかどうでもよくなった。
音以上に、その柵の様子の方が意味不明だったからだ。
三人とも見るのは初めてだったんだが、想像以上のものだった。
同時に、それまでなかったある考えが頭に過ってしまった。
普段は霊などバカにしてるオレ達から見ても、
その先にあるのが、現実的なものでない事を示唆しているとしか思えない。
それも半端じゃなくやばいものが。
まさか、そういう意味でいわくつきの場所なのか…?
森へ入ってから初めて、今オレ達はやばい場所にいるんじゃないかと思い始めた。
A「おい、これぶち破って奥行けってのか?誰が見ても普通じゃねえだろこれ!」
B「うるせえな、こんなんでビビってんじゃねえよ!」
柵の異常な様子に怯んでいたオレとAを怒鳴り、Bは持ってきた道具あれこれで柵をぶち壊し始めた。
破壊音よりも、鳴り響く無数の鈴の音が凄かった。
しかし、ここまでとは想像してなかったため、持参した道具じゃ貧弱すぎた。
というか、不自然なほどに頑丈だったんだ。特殊な素材でも使ってんのかってぐらい、びくともしなかった。
結局よじのぼるしかなかったんだが、綱のおかげで上るのはわりと簡単だった。
だが柵を越えた途端、激しい違和感を覚えた。
閉塞感と言うのかな、檻に閉じ込められたような息苦しさを感じた。
AとBも同じだったみたいで、踏み出すのを躊躇したんだが、柵を越えてしまったからにはもう行くしかなかった。
先へ進むべく歩きだしてすぐ、三人とも気付いた。
ずっと付きまとってた音が、柵を越えてからバッタリ聞こえなくなった事に。
正直、そんなんもうどうでもいいとさえ思えるほど嫌な空気だったが、Aが放った言葉でさらに嫌な空気が増した。
A「もしかしてさぁ、そいつ…ずっとここにいたんじゃねえか?
この柵、こっから見える分だけでも出入口みたいなのはないしさ、それで近付けなかったんじゃ…」
B「んなわけねえだろ。オレ達が音の動きに気付いた場所ですら、こっからじゃもう見えねえんだぞ?
それなのに、入った時点からオレ達の様子がわかるわけねえだろ」
普通に考えれば、Bの言葉が正しかった。禁止区域と森の入り口はかなり離れてる。
時間にして四十分ほどと書いたが、オレ達だってちんたら歩いてたわけじゃないし、
距離にしたらそれなりの数字にはなる。
だが、現実のものじゃないかも…という考えが過ってしまった事で、Aの言葉を頭では否定できなかった。
柵を見てから絶対やばいと感じ始めていたオレとAを尻目に、Bだけが俄然強気だった。
B「霊だか何だか知らねえけどよ、お前の言うとおりだとしたら、そいつはこの柵から出られねえって事だろ?
そんなやつ大したことねえよ。」
そう言って奧へ進んでいった。
柵を越えてから二、三十分歩き、うっすらと反対側の柵が見え始めたところで、不思議なものを見つけた。
特定の六本の木に注連縄が張られ、その六本の木を六本の縄で括り、六角形の空間がつくられていた。
柵にかかってるのとは別の、正式なものっぽい紙垂もかけられてた。
そして、その中央に賽銭箱みたいなのがポツンと置いてあった。
目にした瞬間は、三人とも言葉が出なかった。特にオレとAは、マジでやばい事になってきたと焦ってさえいた。
バカなオレ達でも、注連縄が通常どんな場で何のために用いられてるものか、何となくは知ってる。
そういう意味でも、ここを立入禁止にしているのは、間違いなく目の前のこの光景のためだ。
オレ達はとうとう、来るとこまで来てしまったわけだ。
オレ「お前の親父が言ってたの、たぶんこれの事だろ」
A「暴れるとか無理。明らかにやばいだろ」
だが、Bは強気な姿勢を崩さなかった。
B「別に悪いもんとは限らねえだろ。とりあえずあの箱見て見ようぜ!宝でも入ってっかもな」
Bは縄をくぐって六角形の中に入り、箱に近づいてった。
オレとAは、箱よりもBが何をしでかすかが不安だったが、とりあえずBに続いた。
野晒しで雨とかにやられたせいか、箱はサビだらけだった。
上部は蓋になってて、網目で中が見える。だが、蓋の下にまた板が敷かれていて結局見れない。
さらに箱には、チョークか何かで凄いのが書いてあった。
たぶん家紋?的な意味合いのものだと思うんだが、
前後左右それぞれの面に、いくつも紋所みたいなのが書き込まれてて、しかも全部違うやつ。
ダブってるのは一個もなかった。
オレとAは極力触らないようにし、構わず触るBにも、乱暴にはしないよう注意させながら箱を調べてみた。
どうやら地面に底を直接固定してあるらしく、大して重さは感じないのに持ち上がらなかった。
中身をどうやって見るのかと隅々までチェックすると、後ろの面だけ外れるようになってるのに気付いた。
B「おっ、ここだけ外れるぞ!中見れるぜ!」
Bが箱の一面を取り外し、オレとAもBの後ろから中を覗き込んだ。
箱の中には、四隅にペットボトルのような形の壺?が置かれてて、その中には何か液体が入ってた。
箱の中央に、先端が赤く塗られた五センチぐらいの楊枝みたいなのが、変な形で置かれてた。
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こんな形で六本。接する四ヶ所だけ赤く塗られてる。
オレ「なんだこれ?爪楊枝か?」
A「おい、ペットボトルみてえなの中に何か入ってるぜ。気持ちわりいな」
B「ここまで来てペットボトルと爪楊枝かよ。意味わかんねえ」
オレとAは、ぺットボトルみたいな壺を少し触ってみたぐらいだったが、Bは手に取って匂いを嗅いだりした。
元に戻すと、今度は/\/\>を触ろうと手を伸ばす。
ところが、汗をかいていたのか指先に一瞬くっつき、そのせいで離すときに形がずれてしまった。
その一瞬、
チリンチリリン!!チリンチリン!!
オレ達が来た方とは反対、六角形地点のさらに奧にうっすらと見えている柵の方から、物凄い勢いで鈴の音が鳴った。
さすがに三人とも「うわっ」と声を上げてビビり、一斉に顔を見合わせた。
B「誰だちくしょう!ふざけんなよ!」
Bはその方向へ走りだした。
オレ「バカ、そっち行くな!」
A「おいB!やばいって!」
慌てて後を追おうと身構えると、Bは突然立ち止まり、前方に懐中電灯を向けたまま動かなくなった。
「何だよ、フリかよ?」と、オレとAがホッとして急いで近付いてくと、Bの体が小刻みに震えだした。
「お、おい、どうした…?」
言いながら、無意識に照らされた先を見た。
Bの懐中電灯は、立ち並ぶ木々の中の一本、その根元のあたりを照らしていた。
その陰から、女の顔がこちらを覗いていた。
ひょこっと顔半分だけ出して、眩しがる様子もなくオレ達を眺めていた。
上下の歯をむき出しにするように、い~っと口を開け、目は据わっていた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
誰のものかわからない悲鳴と同時に、オレ達は一斉に振り返り走った。
頭は真っ白で、体が勝手に最善の行動をとったような感じだった。
互いを見合わす余裕もなく、それぞれが必死で柵へ向かった。
柵が見えると一気に飛び掛かり、急いでよじのぼる。
上まで来たらまた一気に飛び降り、すぐに入り口へ戻ろうとした。
だが、混乱しているのか、Aが上手く柵を上れずなかなかこっちに来ない。
オレ「A!早く!!」
B「おい!早くしろ!!」
Aを待ちながら、オレとBはどうすりゃいいかわからなかった。
オレ「何だよあれ!?何なんだよ!?」
B「知らねえよ黙れ!!」
完全にパニック状態だった。
その時、
チリリン!!チリンチリン!!
凄まじい大音量で鈴の音が鳴り響き、柵が揺れだした。
何だ…!?どこからだ…!?
オレとBはパニック状態になりながらも、周囲を確認した。
入り口とは逆、山へ向かう方角から鳴り響き、近づいているのか音と柵の揺れがどんどん激しくなってくる。
オレ「やばいやばい!」
B「まだかよ!早くしろ!!」
オレ達の言葉が余計にAを混乱させていたのはわかってたが、急かさないわけにはいかなかった。
Aは無我夢中に必死で柵をよじのぼった。
Aがようやく上りきろうかというその時、オレとBの視線はそこになかった。
がたがたと震え、体中から汗が噴き出し、声を出せなくなった。
それに気付いたAも、柵の上からオレ達が見ている方向を見た。
山への方角にずらっと続く柵を伝った先、しかもこっち側にあいつが張りついていた。
顔だけかと思ったそれは、裸で上半身のみ、右腕左腕が三本ずつあった。
それらで器用に綱と有刺鉄線を掴んで、い~っと口を開けたまま、巣を渡る蜘蛛のようにこちらへ向かってきていた。
とてつもない恐怖。
「うわぁぁぁぁ!!」
Aがとっさに上から飛び降り、オレとBに倒れこんできた。
それではっとしたオレ達は、すぐにAを起こし、一気に入り口へ走った。
後ろは見れない。前だけを見据え、ひたすら必死で走った。
全力で走れば三十分もかからないだろうに、何時間も走ったような気分だった。
入り口が見えてくると、何やら人影も見えた。
おい、まさか…三人とも急停止し、息を呑んで人影を確認した。
誰だかわからないが、何人かが集まってる。
あいつじゃない。そう確認できた途端に再び走りだし、その人達の中に飛び込んだ。
「おい!出てきたぞ!」
「まさか…本当にあの柵の先に行ってたのか!?」
「おーい!急いで奥さんに知らせろ!」
集まっていた人達はざわざわとした様子で、オレ達に駆け寄ってきた。
何て話しかけられたかすぐにはわからないぐらい、三人とも頭が真っ白で放心状態だった。
そのままオレ達は車に乗せられ、
すでに三時をまわっていたにも関わらず、行事の時とかに使われる集会所に連れてかれた。
中に入ると、うちは母親と姉貴が、Aは親父、Bはお母さんが来ていた。
Bのお母さんはともかく、ろくに会話した事すらなかったうちの母親まで泣いてて、
Aもこの時の親父の表情は、普段見た事ないようなもんだったらしい。
B母「みんな無事だったんだね…!よかった…!」
Bのお母さんとは違い、オレは母親に殴られAも親父に殴られた。
だが、今まで聞いた事ない暖かい言葉をかけられた。
しばらくそれぞれが家族と接したところで、Bのお母さんが話した。
B母「ごめんなさい。今回の事はうちの主人、ひいては私の責任です。
本当に申し訳ありませんでした…!本当に…」と、何度も頭を下げた。
よその家とはいえ、子供の前で親がそんな姿をさらしているのは、やっぱり嫌な気分だった。
A父「もういいだろう奥さん。こうしてみんな無事だったんだから」
オレ母「そうよ。あなたのせいじゃない」
この後、ほとんど親同士で話が進められ、オレ達はぽかんとしてた。
時間が遅かったのもあって、無事を確認しあって終わり…って感じだった。
この時は何の説明もないまま解散したわ。
一夜明けた次の日の昼頃、オレは姉貴に叩き起こされた。
目を覚ますと、昨夜の続きかというぐらい姉貴の表情が強ばっていた。
オレ「なんだよ?」
姉貴「Bのお母さんから電話。やばい事になってるよ」
受話器を受け取り電話に出ると、凄い剣幕で叫んできた。
B母『Bが…Bがおかしいのよ!昨夜あそこで何したの!?柵の先へ行っただけじゃなかったの!?』
とても会話になるような雰囲気じゃなく、いったん電話を切ってオレはBの家へ向かった。
同じ電話を受けたらしくAも来ていて、二人でBのお母さんに話を聞いた。
話によると、Bは昨夜家に帰ってから、急に両手両足が痛いと叫びだした。
痛くて動かせないという事なのか、両手両足をぴんと伸ばした状態で倒れ、
その体勢で痛い痛いとのたうちまわったらしい。
お母さんが何とか対応しようとするも、「いてぇよぉ」と叫ぶばかりで意味がわからない。
必死で部屋までは運べたが、ずっとそれが続いてるので、オレ達はどうなのかと思い電話してきたという事だった。
話を聞いてすぐBの部屋へ向かうと、階段からでも叫んでいるのが聞こえた。
「いてぇいてぇよぉ!」と繰り返している。
部屋に入ると、やはり手足はぴんと伸びたまま、のたうちまわっていた。
オレ「おい!どうした!」
A「しっかりしろ!どうしたんだよ!」
オレ達が呼び掛けても、「いてぇよぉ」と叫ぶだけで目線すら合わせない。
どうなってんだ…オレとAは何が何だかさっぱりわからなかった。
一度お母さんのとこに戻ると、さっきとはうってかわって静かな口調で聞かれた。
B母「あそこで何をしたのか話してちょうだい。それで全部わかるの。昨夜あそこで何をしたの?」
何を聞きたがっているのかは、もちろんわかってたが、
答えるためにあれをまた思い出さなきゃいけないのが苦痛となり、うまく伝えられなかった。
というか、あれを見たっていうのが大部分を占めてしまってたせいで、
何が原因かってのが、すっかり置いてきぼりになってしまっていた。
「何を見たかでなく何をしたか」と尋ねるBのお母さんは、それを指摘しているようだった。
Bのお母さんに言われ、オレ達は何とか昨夜の事を思い出し、原因を探った。
何を見たか?なら、オレ達も今のBと同じ目にあってるはず。
だが何をしたか?でも、あれに対してほとんど同じ行動だったはずだ。
箱だってオレ達も触ったし、ペットボトルみたいなのも一応オレ達も触わってる。
後は…楊枝…
二人とも気付いた。楊枝だ。あれにはBしか触ってないし、形もずらしちゃってる。しかも元に戻してない。
オレ達はそれをBのお母さんに伝えた。
すると、みるみる表情が変わり震えだした。
そしてすぐさま棚の引き出しから何かの紙を取出し、それを見ながらどこかに電話をかけた。
オレとAは様子を見守るしかなかった。
しばらくどこかと電話で話した後、戻ってきたBのお母さんは震える声でオレ達に言った。
B母「あちらに伺う形ならすぐにお会いしてくださるそうだから、今すぐ帰って用意しておいてちょうだい。
あなた達のご両親には私から話しておくわ。何も言わなくても準備してくれると思うから。
明後日またうちに来てちょうだい」
意味不明だった。誰に会いにどこへ行くって?説明を求めてもはぐらかされ、すぐに帰らされた。
一応二人とも真っすぐ家に帰ってみると、何を聞かれるでもなく、「必ず行ってきなさい」とだけ言われた。
意味がまったくわからんまま、二日後にオレとAは、Bのお母さんと三人である場所へ向かった。
Bは、前日にすでに連れていかれたらしい。
ちょっと遠いのかな…ぐらいだと思ってたが、町どころか県さえ違う。
新幹線で数時間かけて、さらに駅から車で数時間。絵に書いたような深い山奥の村まで連れてかれた。
その村のまたさらに外れの方、ある屋敷にオレ達は案内された。
でかくて古いお屋敷で、離れや蔵なんかもあるすごい立派なもんだった。
Bのお母さんが呼び鈴を鳴らすと、おっさんと女の子がオレ達を出迎えた。
おっさんの方は、その筋みたいなガラ悪い感じでスーツ姿。
女の子は、オレ達より少し年上ぐらいで、白装束に赤い袴。いわゆる巫女さんの姿だった。
挨拶では、どうやら巫女さんの伯父らしいおっさんは、普通によくある名字を名乗ったんだが、
巫女さんは『あおいかんじょ?(オレはこう聞こえた)』とかいう、よくわからない名を名乗ってた。
名乗ると言っても、一般的な認識とは全く違うものらしい。
よくわからんがようするに、彼女の家の素性は一切知る事が出来ないって事みたい。
実際オレ達は、その家や彼女達について何も知らないけど、とりあえずここでは見やすいように『葵』って書くわ。
だだっ広い座敷に案内され、わけもわからんまま、ものものしい雰囲気で話が始まった。
伯父「息子さんは今安静にさせてますわ。この子らが一緒にいた子ですか?」
B母「はい。この三人であの場所へ行ったようなんです」
伯父「そうですか。君ら、わしらに話してもらえるか?
どこに行った、何をした、何を見た、出来るだけ詳しくな」
突然話を振られて戸惑ったが、オレとAは何とか詳しくその夜の出来事をおっさん達に話した。
ところが、楊枝のくだりで「コラ、今何つった?」と、いきなりドスの効いた声で言われ、
オレ達はますます状況が飲み込めず混乱してしまった。
A「は、はい?」
伯父「おめぇら、まさかあれを動かしたんじゃねえだろうな!?」
身を乗り出し、今にも掴み掛かってきそうな勢いで怒鳴られた。
すると葵がそれを制止し、蚊の泣くようなか細い声で話しだした。
葵「箱の中央…小さな棒のようなものが、ある形を表すように置かれていたはずです。
それに触れましたか?触れた事によって、少しでも形を変えてしまいましたか?」
オレ「はぁあの、動かしてしまいました。形もずれちゃってたと思います」
葵「形を変えてしまったのはどなたか、覚えてらっしゃいますか?
触ったかどうかではありません。形を変えたかどうかです」
オレとAは顔を見合わせ、Bだと告げた。
すると、おっさんは身を引いてため息をつき、Bのお母さんに言った。
伯父「お母さん、残念ですがね、息子さんはもうどうにもならんでしょう。
わしは詳しく聞いてなかったが、あの症状なら他の原因も考えられる。
まさかあれを動かしてたとは思わなかったんでね」
B母「そんな…」
それ以上の言葉もあったんだろうが、Bのお母さんは言葉を飲み込んだような感じで、しばらく俯いてた。
口には出せなかったが、オレ達も同じ気持ちだった。
Bはもうどうにもならんってどういう意味だ?一体何の話をしてんだ?
そう問いたくても、声に出来なかった。
オレ達三人の様子を見て、おっさんはため息混じりに話しだした。
ここでようやく、オレ達が見たものに関する話がされた。
俗称は『生離蛇螺』/『生離唾螺』
古くは『カンカン蛇螺』/『カンカン唾螺』
なりじゃら、なりだら、かんかんじゃら、かんかんだらなど、
知っている人の年代や家柄によって、呼び方はいろいろあるらしい。
現在では、一番多い呼び方は単に『だら』。
おっさん達みたいな特殊な家柄では、『かんかんだら』の呼び方が使われるらしい。
もはや神話や伝説に近い話。
人を食らう大蛇に悩まされていたある村の村人達は、
神の子として様々な力を代々受け継いでいた、ある巫女の家に退治を依頼した。
依頼を受けたその家は、特に力の強かった一人の巫女を大蛇討伐に向かわせる。
村人達が陰から見守る中、巫女は大蛇を退治すべく懸命に立ち向かった。
しかし、わずかな隙をつかれ、大蛇に下半身を食われてしまった。
それでも巫女は村人達を守ろうと様々な術を使い、必死で立ち向かった。
ところが、下半身を失っては勝ち目がないと決め込んだ村人達はあろう事か、
巫女を生け贄にする代わりに村の安全を保障してほしいと、大蛇に持ちかけた。
強い力を持つ巫女を疎ましく思っていた大蛇はそれを承諾。
食べやすいようにと村人達に腕を切り落とさせ、達磨状態の巫女を食らった。
そうして、村人達は一時の平穏を得た。
後になって、巫女の家の者が思案した計画だった事が明かされる。
この時の巫女の家族は六人。
異変はすぐに起きた。
大蛇がある日から姿を見せなくなり、襲うものがいなくなったはずの村で、次々と人が死んでいった。
村の中で、山の中で、森の中で。
死んだ者達はみな、右腕・左腕のどちらかが無くなっていた。
十八人が死亡。(巫女の家族六人を含む)
生き残ったのは四人だった。
おっさんと葵が交互に説明した。
伯父「これがいつからどこで伝わってたのかはわからんが、あの箱は一定の周期で場所を移して供養されてきた。
その時々によって管理者は違う。箱に家紋みたいのがあったろ?ありゃ今まで供養の場所を提供してきた家々だ。
うちみたいな家柄のもんでそれを審査する集まりがあってな、そこで決められてる。
まれに自ら志願してくるバカもいるがな。
管理者以外にゃかんかんだらに関する話は一切知らされない。
付近の住民には、いわくがあるって事と、万が一の時の相談先だけが管理者から伝えられる。
伝える際には相談役、つまりわしらみたいな家柄のもんが立ち合うから、
それだけでいわくの意味を理解するわけだ。
今の相談役はうちじゃねえが、至急って事で、昨日うちに連絡がまわってきた」
どうやら、一昨日Bのお母さんが電話していたのは別のとこらしく、
話を聞いた先方は、Bを連れてこの家を尋ね、話し合った結果、こっちに任せたらしい。
Bのお母さんは、オレ達があそこに行っていた間にすでにそこに電話してて、ある程度詳細を聞かされていたようだ。
葵「基本的に、山もしくは森に移されます。
御覧になられたと思いますが、六本の木と六本の縄は村人達を、六本の棒は巫女の家族を、
四隅に置かれた壺は、生き残られた四人を表しています。
そして、六本の棒が成している形こそが、巫女を表しているのです。
なぜこのような形式がとられるようになったか。
箱自体に関しましても、いつからあのようなものだったか。
私の家を含め、今現在では伝わっている以上の詳細を知る者はいないでしょう」
ただ、最も語られてる説としては、
生き残った四人が、巫女の家で怨念を鎮めるためのありとあらゆる事柄を調べ、
その結果生まれた独自の形式ではないか…という事らしい。
柵に関しては、鈴だけが形式に従ったもので、綱とかはこの時の管理者によるものだったらしい。
伯父「うちの者で、かんかんだらを祓ったのは過去に何人かいるがな、
その全員が二、三年以内に死んでんだ。ある日突然な。
事を起こした当事者も、ほとんど助かってない。それだけ難しいんだよ」
ここまで話を聞いても、オレ達三人は完全に置いてかれてた。きょとんとするしかなかったわ。
だが、事態はまた一変した。
伯父「お母さん、どれだけやばいものかは何となくわかったでしょう。
さっきも言いましたが、棒を動かしてさえいなければ何とかなりました。
しかし、今回はだめでしょうな」
B母「お願いします。何とかしてやれないでしょうか。私の責任なんです。どうかお願いします」
Bのお母さんは引かなかった。
一片たりともお母さんのせいだとは思えないのに、自分の責任にしてまで頭を下げ、必死で頼み続けてた。
でも泣きながらとかじゃなくて、何か覚悟したような表情だった。
伯父「何とかしてやりたいのはわしらも同じです。しかし、棒を動かしたうえであれを見ちまったんなら……
お前らも見たんだろう。お前らが見たのが大蛇に食われたっつう巫女だ。
下半身も見たろ?それであの形の意味がわかっただろ?」
「…えっ?」
オレとAは言葉の意味がわからなかった。下半身?オレ達が見たのは上半身だけのはずだ。
A「あの、下半身っていうのは…?上半身なら見ましたけど…」
それを聞いておっさんと葵が驚いた。
伯父「おいおい何言ってんだ?お前らあの棒を動かしたんだろ?だったら下半身を見てるはずだ」
葵「あなた方の前に現われた彼女は、下半身がなかったのですか?では、腕は何本でしたか?」
「腕は六本でした。左右三本ずつです。でも、下半身はありませんでした」
オレとAは、互いに確認しながらそう答えた。
すると急におっさんがまた身を乗り出し、オレ達に詰め寄ってきた。
伯父「間違いねえのか?ほんとに下半身を見てねえんだな?」
オレ「は、はい…」
おっさんは再びBのお母さんに顔を向け、ニコッとして言った。
伯父「お母さん、何とかなるかもしれん」
おっさんの言葉に、Bのお母さんもオレ達も、息を呑んで注目した。
二人は言葉の意味を説明してくれた。
葵「巫女の怨念を浴びてしまう行動は、二つあります。
やってはならないのは、巫女を表すあの形を変えてしまう事。
見てはならないのは、その形が表している巫女の姿です」
伯父「実際には、棒を動かした時点で終わりだ。必然的に巫女の姿を見ちまう事になるからな。
だが、どういうわけかお前らは、それを見てない。
動かした本人以外も同じ姿で見えるはずだから、お前らが見てないならあの子も見てないだろう」
オレ「見てない、っていうのはどういう意味なんですか?オレ達が見たのは…」
葵「巫女本人である事には変わりありません。ですが、かんかんだらではないのです。
あなた方の命を奪う意志がなかったのでしょうね。
かんかんだらではなく、巫女として現われた。その夜の事は、彼女にとってはお遊戯だったのでしょう」
巫女とかんかんだらは同一の存在であり、別々の存在でもある…?という事らしい。
伯父「かんかんだらが出てきてないなら、今あの子を襲ってるのは、葵が言うようにお遊び程度のもんだろうな。わしらに任せてもらえれば、長期間にはなるが何とかしてやれるだろう」
緊迫していた空気が初めて和らいだ気がした。
Bが助かるとわかっただけで充分だったし、この時のBのお母さんの表情は本当に凄かった。
この何日かでどれだけBを心配していたか、その不安とかが一気にほぐれたような、そういう笑顔だった。
それを見ておっさんと葵も雰囲気が和らぎ、急に普通の人みたいになった。
伯父「あの子は正式にわしらで引き受けますわ。お母さんには後で説明させてもらいます。
お前ら二人は、一応葵に祓ってもらってから帰れ。今後は怖いもの知らずもほどほどにしとけよ」
この後Bに関して少し話したのち、お母さんは残り、オレ達はお祓いしてもらってから帰った。
この家の決まりだそうで、Bには会わせてもらえず、どんな事をしたのかもわからなかった。
転校扱いだったのか在籍してたのかは知らんが、これ以来一度も見てない。
まぁ死んだとか言うことはなく、すっかり更正して今はちゃんとどこかで生活してるそうだ。
ちなみにBの親父は、一連の騒動に一度たりとも顔を出してこなかった。どういうつもりか知らんが。
オレとAも、わりとすぐ落ち着いた。
理由はいろいろあったが、一番大きかったのは、やっぱりBのお母さんの姿だった。
ちょっとした後日談もあって、たぶん一番大変だったはずだ。
母親ってのがどんなもんか、考えさせられた気がした。
それにこれ以来うちもAんとこも、親の方から少しづつ接してくれるようになった。
そういうのもあって、自然とバカはやらなくなったな。
一応他にわかった事としては、
特定の日に集まってた巫女さんは、相談役になった家の人。
かんかんだらは、危険だと重々認識されていながら、ある種の神に似た存在にされてる。
大蛇が山だか森だかの神だったらしい。それで年に一回、神楽を舞ったり祝詞を奏上したりするんだと。
あと、オレ達が森に入ってから音が聞こえてたのは、かんかんだらは柵の中で放し飼いみたいになってるかららしい。
でも六角形と箱のあれが封印みたいになってるらしく、
棒の形や六角形を崩したりしなければ、姿を見せる事はほとんどないそうだ。
供養場所は、何らかの法則によって、山や森の中の限定された一部分が指定されるらしく、
入念に細かい数字まで出して範囲を決めるらしい。
基本的にその区域からは出られないらしいが、
柵などで囲んでる場合は、オレ達が見たみたいに外側に張りついてくる事もある。
わかったのはこれぐらい。
オレ達の住んでるとこからはもう移されたっぽい。
二度と行きたくないから確かめてないけど、一年近く経ってから柵の撤去が始まったから、
たぶん今は別の場所にいるんだろな。
洒落怖の名作「測量のバイトをしていた」
(おい・・おい・・ この話マジなのか・・ 作り話じゃないのか?
(俺の話を聞いてくれ。俺は37才のおっさんだが、学生の頃測量のバイトをしていた。山の中に入って色々図るアレだ。
夕方になって今日の仕事も終わりだーってなった頃、その注連縄と箱(石川五右衛門とかが盗みそうなジャパニーズ宝箱って感じ)を見つけたんだ。
社員の奴らは後片付けとかしてたんだけど、俺らバイトは一服でもしてろって言われて、タバコくわえながらその辺をブラブラしてたんだ。
その時、バイト仲間が変な箱があるって言うから行ってみたんだ。
縄で囲ってあるそんなには広くない中に、一本だけ大きな木があった。
その木の根元に何本かの一号徳利と、その箱が祭ってある祭壇(祭壇って言うにはボロかった)のようなものがあった。
近づいてバイト仲間と二人でその箱を開けたんだ。鍵なんて掛かってなかった。
箱の中には、プラモデルのランナー(の様に見えた)で長さは10センチくらいの棒が何本か入ってた。
ブルーのランナーだったけど先端だけオレンジに塗ってあった。
それがこの話みたいに//>>←なんかこんな感じに並んでたんだよ。
なんだコレ?って感じでふたを閉じた。この話みたいに触ったりなんかはしてない。
そんなこんなしてると「おーい!お前ら帰るぞー!」との社員の声が。
俺たちは「ウィース!」なんてその場を後にしたんだ。
(「アレなんだったんスかねぇ~?」なんてバイト仲間と話しながら車に戻ってると、背後からザザッって何かを引きずるような音がしたんだ。
振り返って見ると、この話みたいに大きな木の陰から女が覗いてた。女って言うより少女くらいの年に見えた。
俺は戦慄したよ。若い女がこんな時間にこんな山の中で何をやってんだ?
そして何よりも、さっきまで俺たちがあそこにいたのに何できづかなかった?軽いパニックになった。
「オイ・・アレ・・・」バイト仲間が話しかけてきた。
「ああ・・・女だな・・」
俺はもう暗くなってきたし、女一人でこんなところにいる理由もわからないけど、声を掛けることにしたんだ。
「おーい、なにやってるのー?」
俺が近寄っていくと女は薄く微笑んで(とても妖艶な笑顔だった)木の陰に引っ込んだ。
その時、この話みたいにチリ-ンっていう鈴の音と、何かを引きずる音が聞こえた。
俺が大きな木まで行くと、女はもういなかった。俺は立ち尽くしたよ。
バイト仲間も来て二人であたりを探したり、大声で呼んだりしてみたが結局女は現れなかった。
なんだったんだろうと思ったけど、社員に「お前ら何やってんだ!早く帰るぞ!」怒鳴られしぶしぶ帰ったんだ。
(次の日って言うかその日の夜中から両手、両腕が腫れ上がって大変だった。(別に痛くはなかった)
次の日の昼くらいにはウソみたいに治ったけど。
バイト仲間に聞いたらおんなじ様な症状が出てたらしい。
そんなこんなで今まで変な話だったなーくらいで忘れてたんだけど、この話を読んでぞっとしたよ・・・。
(この話と違う点
・そんな厳重に禁足地として警戒されてる感じではなかった
・家紋なんて多分なかった
・はっきり見てないけど女の手は片方に三本なんてなかった(もう片方は木の陰で見えなかった)
・この話みたいに女は怖い顔をしてなかった(どちらかというと不思議そうな顔をしてこちらを観察してる感じだった)っていうか可愛い顔をしていたような気がする
・巫女服って言うより女忍者みたいな格好だった気がする
・その筋の人におまじないなんか受けなくても勝手に治ったし、その後も17年間なんの問題もない
・下半身は見えなかった
(どうなんだろう、お前ら教えてくれよ!コレ、作り話なんだよな?!あの棒を触っていたらとおもうと・・・怖いよ!
(あ、別に隠す気もないし今は住んでいないので言いますけど、この事件(?)があった場所は山形県ですよ。朝日連峰ですよ。