私がペットにしているハムスターのオスが、いつの間にか飼い主の隙間を見計らいケージを脱走して、部屋に忍び込んだ話です。まるでハムスターの夜這いです。ハムスターと判明するまでの恐ろしさは、何か実態が分からない時に感じる恐怖心です。
普段から動物が好きで様々な種類の生き物を自宅に飼っていたんです
そんな私の評判を聞きつけた同級生が、ハムスターの赤ちゃんを引き取ってほしいと依頼してきたんです。
どうやら、同級生が飼っていたハムスターのつがいに、子供がたくさん生まれたので、困っているという話でした。
そこで、私は同級生が飼うハムスターのうち、オスのつもりで、2匹をもらいうけたんです。
まだ、赤ん坊のハムスターに毛は生えておらず、性別はオスだと思われるピンク色をした肌が可愛いハムスターでした。
この2匹のハムスターを同じケージに入れて飼育していたんです。
すくすくと育つ2匹に目を細めていた頃、一匹のハムスターの異変に気がついたんです。そのハムスターは、白毛が特徴で良く目立つ可愛い子でした。その子は寝食惜しんで何かをしているんです。
良く見ると、せっせ、せっせとケージの中に入れてあげたワタを運んでいるんです。そして月日が経過して暫くすると、白い毛のハムスターが部屋から姿を見せなくなりました。
そうしてある日、心配になった私は、ハムスターの部屋を勝手に覗いてみたんです。すると、そこにはピンク色をした肌の小さなハムスターが数匹いるのです。もはや、状況を見てメスの出産だと分かりました。
そして、このハムスターのお父さんですが
こちらは成長とともに体の構造からオスであることは直ぐにわかりました。でも、オスのハムスターの生態までは知らなかったのです。
あれは、残暑が厳しい夜のことでした。私は、いつもの通りに就寝しました。暫くすると、部屋の隅にある押入れあたりで、カサカサと何かが暴れているんです。
その音は、人間が物置を漁っているスピードのように俊敏な音でした。
直ぐに頭に浮かんだのは、夏の時期ですから、ハムスターの匂い誘われた野ネズミか蛇が進入したのかもしれないということでした。
これを捕獲するには、危険を伴うと思い、あらかじめ防具を備えて音のする方へと近づいたんです。覚悟を決めて勇気を振り絞りながら、そっと、押入れを開けてみると、そこにはハムスターのオスが新聞紙を歩き回っていました。
ケージの中に入るはずのハムスターが一体どういう方法でケージの出入り口を脱出したのか。此処で何をしているのかわかりませんでしたが、直ぐに捕獲してケージへと戻したんです。
今となれば笑い話ですが、当時ハムスターが部屋をうろつく音は、一生の内にあるかないかの恐怖心でした。